Copilot Studioとは|できること・料金の仕組み・Microsoft 365 Copilotとの違い

Copilot Studioは、Microsoftが提供する「自社専用のAIエージェント(チャットボット)を作るツール」です。社内規程やマニュアル、Webサイトを知識として読み込ませ、TeamsやWebサイト上で質問に答えさせたり、Power Automateと組み合わせて申請や通知の処理まで任せたりできます。画面操作で作れるローコードの道具で、旧Power Virtual Agentsの後継にあたります。
Word・Excel・Teamsの中で個人の作業を手伝うMicrosoft 365 Copilotとは役割が違います。Microsoft 365 Copilotは「すでに用意されたAIを使う」製品で、Copilot Studioは「自社の業務に合わせたAIを作る」製品です。料金は2026年10月時点で、エージェントが使った分をCopilot Creditsという単位で払う仕組みになっています。
この記事では、できること、料金の仕組み、Microsoft 365 Copilotとの違い、導入前に確認したい点を先に整理し、そのあとで機能と使い方を順に説明します。料金と仕組みは、2026年10月22日に更新されたMicrosoft Learnの説明をもとにしています。
Copilot Studioでできること・できないこと
Copilot Studioでできるのは、社内外の人が質問を投げると、指定した資料やシステムをもとに答えたり、処理を進めたりするAIエージェントを作ることです。代表的な使い方は次のとおりです。
- 社内規程、手順書、SharePointの資料を知識として登録し、社員からの問い合わせに答えさせる
- 公開Webサイトを知識として登録し、お客様向けのFAQ窓口にする
- Power Automateのフローと組み合わせて、申請の受け付け、データの登録、担当者への通知まで進める
- 作ったエージェントをTeams、Webサイト、Microsoft 365 Copilotの中から呼び出せるようにする
一方で、登録していない情報には正確に答えられないし、元の資料が古ければ答えも古くなります。資料の整備と、答えを人が見直す運用は、ツールを入れても残る仕事です。
Copilot Studioの料金の仕組み(2026年10月時点)
Copilot Studioの料金は、エージェントの利用量をCopilot Creditsという共通の単位で数え、その分を支払う形になっています。Microsoft Learnのライセンス説明(2026年10月22日更新)では、支払い方法として次の3つが挙げられています。
支払い方法 | 内容 |
|---|---|
容量パック(前払い) | テナント単位でCopilot Creditsをまとめて購入する |
従量課金 | Azureのサブスクリプションにひも付け、使った分だけ支払う |
1年分の事前購入 | 1年間で使う量を先に購入する |
同じ説明では、エージェントを作る人のライセンス自体は無料で、テナントに前払いの容量があることが前提とされています。試用ライセンスではエージェントを公開できません。使い切れなかったCopilot Creditsは翌月に繰り越されません。Microsoft 365 Copilotのライセンスを持つ人が、Copilot Chat・Teams・SharePointの中でエージェントを使う場合は、一部の応答がCopilot Creditsの消費対象外になります。
金額は為替や契約形態で変わるため、この記事では書きません。見積もりはMicrosoftの公式料金ページか、販売パートナーで確認してください。
Microsoft 365 Copilotとの違い
比べる点 | Copilot Studio | Microsoft 365 Copilot |
|---|---|---|
何をする製品か | 自社用のAIエージェントを作る | Word・Excel・Teamsなどで個人の作業を手伝う |
使う人 | エージェントを作る担当者と、それを使う社員やお客様 | ライセンスを割り当てられた社員 |
答えの元になる情報 | 作る人が登録した資料・Webサイト・システム | 本人がアクセスできるメール・ファイル・予定など |
料金の考え方 | Copilot Creditsで利用量に応じて支払う | 利用者ごとのライセンス |
両方を組み合わせることもできます。Copilot Studioで作ったエージェントを、Microsoft 365 Copilotの中から呼び出す使い方です。
1. Microsoft Copilot Studioの概要
Microsoft Copilot Studioは、2023年11月のMicrosoft Igniteで発表された、企業がAIエージェント(旧称チャットボット・コパイロット)を作るための、ローコードのエージェント作成ツールです。このツールは、以前のPower Virtual Agents(PVA)の進化版として位置づけられており、企業独自のコパイロットやカスタムGPTの構築・管理を容易にする目的で開発されました。
組織内で使用するカスタムAIアシスタントを構築したい企業や、パブリックに公開するAIアシスタントを作成したいビジネスにとって、Copilot Studioは理想的なソリューションとなります。ローコードインターフェースを採用しており、プログラミングスキルがなくても高度なAIアシスタントを構築できる点が大きな特徴です。
1.1 Copilot Studioの登場背景と開発経緯
Copilot Studioの開発は、ビジネス環境におけるAI活用の需要の高まりを背景としています。特に、ChatGPTの登場によってAIの可能性が広く認識されるようになり、企業独自のAIソリューションへの要望が急増しました。しかし、多くの企業ではAI開発の専門知識を持つ人材が不足しており、この課題を解決するために、Microsoftは誰でも簡単にAIツールを作成できるプラットフォームの開発に着手しました。
Microsoftは以前からPower Virtual Agents(PVA)で、ローコードでチャットボットを作成できる環境を提供していましたが、大規模言語モデル(LLM)の急速な進化に伴い、より高度なAI機能を搭載した新しいプラットフォームの必要性が生じました。そこで、Microsoft Copilot Studioが開発され、Azure OpenAIの機能を活用した強力なAIアシスタント作成ツールとして生まれ変わったのです。
技術的な専門知識がなくても、ビジネスユーザーが自社のニーズに合わせたAIソリューションを構築できる環境を整えることで、組織全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させることを目指しています。
1.2 Copilot StudioとPower Virtual Agentsの関係性
Microsoft Copilot StudioとPower Virtual Agents(PVA)の関係を理解することは、このプラットフォームの発展経緯を把握する上で重要です。Copilot Studioは、PVAの後継として位置づけられていますが、単なる名称変更ではなく、機能面で大幅な拡張が行われています。
Power Virtual Agentsは従来、ルールベースのチャットボット作成に重点を置いていましたが、Copilot Studioはそれを大きく発展させ、生成AIの機能を全面的に活用したプラットフォームとなりました。PVAユーザーは、既存のチャットボットをCopilot Studioに移行でき、新しい生成AI機能を活用できるようになっています。
2023年11月のIgnite会議で、マイクロソフトは正式にPVAからCopilot Studioへの移行を発表しました。この移行では以下の点が強調されています。
- 既存のPVAボットは自動的にCopilot Studioに移行される
- ユーザーインターフェースが刷新され、より直感的な操作が可能に
- 生成AIを活用した高度な対話機能の追加
- Microsoft 365 Copilotとの緊密な統合
- API管理機能の強化
PVAとCopilot Studioの最も顕著な違いは、後者がAzure OpenAIサービスを活用している点です。これにより、自然言語での会話がよりスムーズになり、複雑な質問に対しても適切な回答を生成できるようになりました。また、Copilot Studioではマルチターン会話や文脈理解能力が大幅に向上しており、より人間らしい対話体験を実現しています。
Power Platformのエコシステム内では、Copilot StudioはPower Apps、Power Automate、Power BIなどの他のサービスとシームレスに連携します。このことから、Copilot Studioは単独のツールというよりも、Microsoftの包括的なビジネスソリューションポートフォリオの一部として機能していることがわかります。
2023年11月にPower Virtual AgentsはCopilot Studioに統合され、既存のボットはそのまま引き継がれました。
この進化により、Copilot Studioは単なるチャットボット作成ツールから、企業のAI戦略全体を形作る中核的なプラットフォームへと発展しました。次世代のカスタマーサービス、従業員支援、業務効率化など、様々なビジネスシナリオにおいて革新的なソリューションを提供する基盤となっています。
2. Microsoft Copilot Studioの主な3つの特徴
Microsoft Copilot Studioは、企業がAIを活用して独自のインテリジェントソリューションを構築するための強力なプラットフォームです。従来のPower Virtual Agentsから進化したこのツールは、特に以下の3つの主要な特徴によって、ビジネスプロセスの効率化と顧客体験の向上に大きく貢献します。
2.1 生成AIの応答を自社向けに調整する機能
Copilot Studioの最も革新的な特徴の一つは、組織固有のニーズに合わせて生成AIの応答を調整できる点です。これにより、一般的なAIチャットボットから一歩進んだ、企業独自の知識を持った専門的なAIアシスタントの構築が可能になります。
カスタムコパイロットの作成では、企業の内部データやナレッジベースを接続し、特定の業務シナリオに最適化されたAI応答を生成できます。例えば、営業部門専用のコパイロットは顧客データや製品情報にアクセスして、営業担当者の質問に正確に回答することが可能です。
マイクロソフト公式のドキュメントによると、このカスタマイズ機能により、企業は独自のAIソリューションを「コーディング不要」で迅速に開発できるとされています。これはIT部門への負担を減らしながら、ビジネス部門が直接AIソリューションを構築できることを意味します。
2.2 オールインワン管理システム
Copilot Studioは単なるAI開発ツールではなく、AIソリューションのライフサイクル全体を管理するための包括的なプラットフォームを提供します。開発から配布、分析、改善までを一つのインターフェースで実行できる点が大きな特徴です。
統合管理コンソールでは、複数のコパイロットやプラグインを一元管理し、その効果を測定・分析できるため、継続的な改善サイクルを確立できます。特に大規模組織では、部門ごとに異なるAIアシスタントを運用する場合でも、一貫した管理と監視が可能です。
2.2.1 分析と改善サイクル
管理システムの中でも特に価値が高いのは、AIとの対話を分析し、継続的に改善するための機能です。ユーザーとの会話ログを分析することで、よくある質問やAIが対応できなかった事例を特定し、コパイロットの能力を拡張していくことができます。
例えば、顧客サポート向けのコパイロットを運用している場合、「解決率」「会話の長さ」「エスカレーション率」などの指標を監視し、AIのパフォーマンスを定量的に評価できます。これらのデータに基づいて、応答テンプレートの改善やナレッジベースの拡充を行うことで、コパイロットの効果を継続的に高めることが可能です。
2.3 Microsoftエコシステムとの連携
Copilot Studioの強みは、Microsoft 365やPower Platform、Azure OpenAIなど、Microsoftの広範なエコシステムとシームレスに統合できる点にあります。この連携により、既存のMicrosoft投資を最大限に活用したAIソリューションを構築できます。
Microsoft 365アプリケーション(Teams、Outlook、SharePointなど)と統合することで、従業員の日常的なワークフローの中にAIアシスタントを自然に組み込むことができます。また、Power AutomateやPower BIとの連携により、AIの判断に基づいた自動化や高度な分析も実現可能です。
1,000種類を超えるコネクタ(件数は随時増えるため最新は公式一覧で確認)を通じて様々なビジネスシステムとCopilot Studioを接続できるため、既存のデータソースやアプリケーションを活用したAIソリューションの構築が容易になります。
2.3.1 業界特化型のソリューション
Microsoftエコシステムとの連携を活用することで、様々な業界向けの特化型AIソリューションを構築できます。
例えば、
- 医療分野では、患者データへの安全なアクセスと分析を提供するコパイロット
- 製造業では、生産データと連携して予防保全を支援するコパイロット
- 金融サービスでは、コンプライアンス要件を満たした顧客対応を行うコパイロット
これらの業界別ソリューションは、一般的なAIツールでは実現が難しいレベルの専門性と統合性を提供します。特に規制の厳しい業界では、Microsoftのエンタープライズレベルのセキュリティとコンプライアンス機能が大きな価値を持ちます。
Copilot Studioのこれら3つの主要特徴は個別に価値がありますが、それらを組み合わせることで真の力を発揮します。カスタマイズ機能で企業独自のAIソリューションを作り、統合管理システムで効率的に運用し、Microsoftエコシステムとの連携で幅広いビジネスプロセスに適用します。このサイクルがビジネスのデジタルトランスフォーメーションを加速します。
3. Microsoft Copilot Studioの基本的な使い方
Microsoft Copilot Studioは、ローコードプラットフォームを活用してAIアシスタントを簡単に構築・管理できるツールです。基本的な使い方を理解することで、業務効率化や顧客対応の自動化など、様々なビジネスシーンで活用できます。この章では、実際の操作方法から応用まで詳しく解説します。
3.1 プラグインの構築と公開手順
Copilot Studioの強力な機能の一つが、カスタムプラグインの構築と公開です。これにより、Microsoft 365 Copilotの機能を拡張し、特定の業務ニーズに合わせたソリューションを提供できます。
3.1.1 プラグイン構築の基本ステップ
Copilot Studioでプラグインを構築する基本的な手順は以下の通りです。
- アクセス権の取得:管理者からCopilot Studio環境へのアクセス権を取得します
- 新規作成:Copilot Studioにログインし、エージェント(またはツール)を新規作成する。画面名は更新で変わるため、最新手順はMicrosoft Learnを参照
- 基本情報の設定:プラグイン名、説明、アイコンなどの基本情報を設定
- 機能のデザイン:会話フロー、トリガーワード、応答メッセージを設計
- データ接続の構成:必要なデータソースへの接続を構成
- テスト実行:プラグインの動作を確認
- 公開設定:公開範囲やアクセス権限を設定
- 公開実行:Microsoft 365 Copilotに公開
公開するときは、公開範囲(組織全体か特定のグループか)、アクセス権限、組織の承認手順を事前に確認しておく必要があります。
3.1.2 公開後の管理とモニタリング
プラグインを公開した後も、継続的な管理とモニタリングが重要です。Copilot Studioの分析画面や管理者向け画面では、次のような管理ができます(画面の名前や配置は更新で変わるため、Microsoft Learnで確認してください)。
- 使用状況の分析とレポート作成
- パフォーマンスのモニタリング
- バージョンの更新と管理
- ユーザーフィードバックの収集
特に重要なのは、利用統計を分析してプラグインの改善点を見つけることです。Copilot Studioの分析機能を活用することで、ユーザーとの対話パターンや成功率を把握できます。
3.2 グラフィカルビルダーの活用法
Copilot Studioの大きな特徴は、コーディング知識がなくてもAIアシスタントを構築できるグラフィカルビルダーです。この視覚的なインターフェースを活用することで、複雑な会話フローも簡単に設計できます。
3.2.1 会話フローの設計
グラフィカルビルダーを使用した会話フローの設計プロセスは以下の通りです。
- トリガーの設定:ユーザーのどのような発言に反応するかを設定
- ノードの追加:応答、条件分岐、データ取得などのノードを追加
- 条件分岐の構成:ユーザー入力や変数に基づいた分岐を設定
- 応答メッセージの作成:AI応答の内容を設計
- エンティティの抽出:ユーザー発言から重要な情報を抽出するルールを設定
グラフィカルビルダーには、一般に次のような利点があります。
- 視覚的に会話フローを確認できるため、設計の全体像を把握しやすい
- ドラッグ&ドロップ操作で簡単に要素を追加・編集できる
- 分岐条件や変数の設定もGUIで直感的に行える
- リアルタイムでのテストと検証が可能
- 複雑なシナリオもノードの組み合わせで表現できる
3.2.2 Power Platformとの連携活用
Copilot Studioは、Microsoft Power Platformと緊密に統合されており、グラフィカルビルダーからPower Automateのフローを呼び出したり、Power BI のデータを参照したりすることができます。
特に注目すべきは、1,000種類を超える事前構築されたコネクタを活用できる点です。これにより、Salesforce、SAP、ServiceNowなどの外部システムとも簡単に連携できます。
3.3 カスタムコパイロットの作成ステップ
特定のビジネスニーズに合わせたカスタムコパイロットを作成することで、より専門的なタスクに対応するAIアシスタントを実現できます。Microsoftの公式ドキュメントによると、カスタムコパイロットの作成は次のステップで行います。
3.3.1 カスタムコパイロット作成の基本フロー
- ユースケースの特定:解決すべき具体的な業務課題を明確にする
- コパイロット設計:目的、対象ユーザー、主要機能を設計
- 知識ベースの構築:関連ドキュメントや情報源を統合
- 応答の設計:よくある質問に対して、どの知識や手順で答えるかを組み立てる
- テスト環境での検証:実際のシナリオでの動作を確認
- パフォーマンス調整:応答精度や速度の最適化
- ユーザー向け公開:対象ユーザーに対して利用可能にする
カスタムコパイロットの作成では、特に業種別の特化型AIアシスタントが注目されています。例えば:
- IT部門向けヘルプデスクコパイロット
- 営業チーム向け顧客情報アシスタント
- 人事部向け社内規定ナビゲーター
- 財務部向け予算分析アシスタント
- 製造現場向けトラブルシューティングガイド
3.3.2 知識ベースの効果的な構築方法
カスタムコパイロットの精度を高めるためには、適切な知識ベースの構築が不可欠です。知識ベースは、コパイロットが回答を生成する際の情報源となります。
知識の質を保つには、資料の更新日を決めておくことと、答えられなかった質問を見て資料を足すことの2つを運用に組み込むとよいでしょう(筆者の考え)。登録できるナレッジソースの種類や件数の上限は、Microsoft Learnの「知識源の概要」で確認できます。
3.4 AI応答機能の設定と調整
Copilot Studioでは、生成AIの能力を活用して自然な応答を生成することができます。この応答機能を適切に設定し調整することで、より人間らしく有用な対話を実現できます。
3.4.1 応答生成のためのプロンプト設計
効果的なAI応答を実現するためには、適切なプロンプト(指示)の設計が重要です。以下のポイントに注意して設計しましょう:
- 明確な指示:AIに何を期待しているかを具体的に指示する
- トーンの設定:フレンドリー、ビジネスライク、専門的など適切なトーンを指定
- 文脈の提供:関連する背景情報や制約条件を含める
- 出力形式の指定:リスト、段落、箇条書きなど希望する形式を指定
- 例示の活用:望ましい応答例を示してAIの理解を助ける
指示文を具体的に書くと、答えの質が安定しやすいです。
3.4.2 応答の調整とパーソナライズ
応答の調整は、エージェントへの指示文(インストラクション)、登録する知識の範囲、トピックごとの応答の設計で行います。画面の項目名や設定できる範囲は更新されることがあるため、最新の手順はMicrosoft Learnで確認してください。
また、SharePointなど一部のナレッジソースは、使う人のMicrosoft Entra ID認証で検索されるため、その人が見られる資料をもとに答えます(Microsoft Learn)。
3.4.3 マルチターン対話の実装
高度なユーザー体験を提供するためには、会話の文脈を維持したマルチターン対話の実装が必要です。Copilot Studioでは、以下の機能を活用して実現できます:
- 会話変数の活用:ユーザー情報や会話の状態を保持
- 文脈認識応答:前の発言を考慮した回答生成
- プロアクティブな質問:必要な情報を段階的に収集
- 対話の分岐と再結合:複数の話題を並行して扱う機能
- 記憶機能:過去の対話内容を参照する能力
この技術を活用することで、例えばカスタマーサポートシナリオでは、ユーザーが複数の質問を投げかけても文脈を維持しながら適切に対応できるようになります。
Copilot Studioを使いこなすことで、組織特有のニーズに合わせたAIソリューションを迅速に構築・展開できます。基本的な使い方を習得した後は、より高度なシナリオや連携機能を探索することで、さらなる業務効率化や顧客体験の向上が期待できるでしょう。
4. Copilot Studioのガバナンスとコントロール
Microsoft Copilot Studioは、AIソリューションの開発と管理を容易にするだけでなく、企業全体でのAI活用を適切に統制するためのガバナンスとコントロール機能も提供しています。組織がAIを導入する際、セキュリティ、コンプライアンス、そして監視機能は極めて重要です。このセクションでは、Copilot Studioが提供するガバナンスとコントロール機能について詳しく解説します。
4.1 管理センターの使い方
Copilot Studioの管理センターは、組織全体のAIソリューションを一元管理するための中枢機能です。この管理センターを通じて、IT管理者やビジネスリーダーは組織内のすべてのコパイロットとプラグインを可視化し、管理することができます。
4.1.1 管理センターへのアクセス方法
組織全体の管理は、Power Platform管理センターなどの管理者向け画面で行います。画面の構成は更新されることがあるため、具体的な操作はMicrosoft Learnの管理者向けドキュメントで確認してください。
4.1.2 アクセス管理と権限設定
管理センターでは、誰がどのコパイロットやプラグインにアクセスできるかを詳細に設定できます。これにより、機密情報や特定の業務プロセスに関するAIソリューションへのアクセスを適切に制限することができます。
セキュリティとコンプライアンスを確保するため、ロールベースのアクセス制御(RBAC)を活用し、最小権限の原則に従って権限を設定することが推奨されます。この方法により、ユーザーは自分の業務に必要な機能にのみアクセスでき、不要なリスクを軽減できます。
4.1.3 環境管理
Copilot Studioでは、開発環境、テスト環境、本番環境といった複数の環境を管理できます。管理センターからこれらの環境間でコパイロットやプラグインを移行する際のワークフローを設定でき、適切なテストと承認プロセスを経てからソリューションを本番環境にデプロイすることが可能です。
環境管理の主な機能には以下があります。
- 環境ごとのリソース割り当て
- 環境間のソリューション移行管理
- 環境特有の設定とポリシーの適用
- 本番環境へのデプロイ承認ワークフロー
Microsoft公式ドキュメントでは、環境管理の詳細な手順とベストプラクティスが紹介されています。
4.1.4 ポリシー管理
管理センターでは、組織全体または特定の環境に対するポリシーを設定できます。これには、データの保持期間、AIモデルの使用制限、コンテンツフィルタリングなどが含まれます。
重要なポリシー設定には以下があります。
- データ保持ポリシー:ユーザーとの対話データをどれだけの期間保存するか
- コンテンツフィルタリング:不適切な内容や機密情報の漏洩を防ぐためのフィルタリング設定
- リソース使用制限:AIモデルの使用量や呼び出し回数の制限
4.2 監視と分析機能の活用
Copilot Studioの監視と分析機能を活用することで、AIソリューションのパフォーマンスを継続的に評価し、改善することができます。これらの機能は、ユーザーエンゲージメントの測定から、潜在的な問題の早期発見まで、幅広い目的で活用できます。
4.2.1 パフォーマンスダッシュボード
Copilot Studioの分析画面では、エージェントの利用状況を確認できます。表示される指標は更新で変わることがあるため、次は確認したい観点の例です。
- 総利用者数と一意のユーザー数
- セッション数と平均セッション時間
- 正常に処理されたリクエストの割合
- 応答時間の平均と分布
- エラー率とエラーの種類
これらの指標は、AIソリューションの健全性と有効性を評価するための重要な情報を提供します。例えば、特定のコパイロットでエラー率が急増している場合、技術的な問題が発生している可能性があり、早急な対応が必要かもしれません。
4.2.2 ユーザーインタラクション分析
Copilot Studioは、ユーザーとコパイロットのインタラクションを詳細に分析する機能を提供しています。これにより、以下のような洞察を得ることができます。
- 分析要素:よくある質問パターン得られる洞察:ユーザーが頻繁に尋ねる質問や問い合わせ活用例:FAQの拡充、コンテンツの改善
- 分析要素:応答品質得られる洞察:AIの回答が適切であったかどうか活用例:プロンプトの最適化、モデルのファインチューニング
- 分析要素:対話フロー得られる洞察:会話の流れや中断ポイント活用例:対話シナリオの改善、フローの最適化
- 分析要素:未応答クエリ得られる洞察:AIが回答できなかった質問活用例:知識ベースの拡充、新機能の追加検討
これらの分析を通じて、AIソリューションを継続的に改善し、ユーザーのニーズにより適切に応えることができます。特に重要なのは、ユーザーからのフィードバックとAIの応答品質を定期的に評価し、必要に応じてプロンプトやモデルを調整することです。
Microsoft Copilot Studioの分析機能の概要では、より詳細な分析手法と活用方法が解説されています。
4.2.3 アラート・通知を出したい場合
2026年10月時点のMicrosoft Learnの分析(Monitor)ページには、エラー率などのしきい値でアラートを出す機能は書かれていません。しきい値での通知が必要なら、Azure Application InsightsやPower BIとつないで自前で組む必要があります(構成は公式手順を確認)。Copilot Creditsの容量の監視とアラートは、課金の説明ページに別の機能として載っています。
4.2.4 監査ログと変更履歴
コンプライアンスと説明責任を確保するため、Copilot Studioは包括的な監査ログと変更履歴を提供しています。この機能を使用して、以下のような情報を追跡できます。
- コパイロットやプラグインの作成、変更、削除
- 権限設定やアクセス権の変更
- ポリシー設定の修正
- 環境間のソリューション移行
- 管理者アクションと承認プロセス
これらの監査ログは、内部監査や規制要件への対応に不可欠です。また、問題が発生した場合の原因究明や、変更管理プロセスの改善にも役立ちます。
Microsoft Copilot Studioのセキュリティとコンプライアンスに関するドキュメントでは、監査とコンプライアンスについての詳細情報が提供されています。
4.2.5 レポート生成と共有
Copilot StudioのMonitorページでは、利用者数、会話の解決・エスカレーション・離脱、満足度を確認でき、直近28日分の会話記録をダウンロードできます(Microsoft Learn、2026年10月時点)。週次・月次の定期レポートやPDF・Excelでの配布が必要なら、Power BIなどにデータをつないで自前で組みます。
4.2.6 セキュリティ監視と脅威検出
Copilot Studioは、Microsoft 365のセキュリティ機能と統合され、AIソリューションに対する潜在的な脅威を検出し対応する機能を提供しています。セキュリティ監視の主な側面には以下があります。
- 異常なアクセスパターンの検出
- データ漏洩防止(DLP)ポリシーの適用
- 悪意のあるプロンプトや攻撃の検出
- 機密情報の露出監視
これらの機能により、AIソリューションのセキュリティを強化し、組織のデータと知的財産を保護することができます。特に、生成AI技術特有のプロンプトインジェクション攻撃などの新しいタイプの脅威に対する防御が重要です。
Copilot Studioのガバナンスとコントロール機能を効果的に活用することで、組織は安全かつコンプライアンスに準拠した方法でAIソリューションを展開し、継続的に管理・改善することができます。これにより、AI導入の成功率を高め、長期的な価値創出を実現できるでしょう。
5. Copilot Studioの実践的な利用シーン
Copilot Studioが向いているのは、同じ種類の質問や手続きが繰り返し来て、答えの元になる資料がすでにある業務です。部門ごとの使いどころを表にまとめます。
部門 | 任せやすい仕事 | 先に整えておくもの |
|---|---|---|
人事・総務 | 就業規則、休暇、経費精算の手順に関する問い合わせ | 最新の規程と手順書 |
情報システム | パスワード再設定やソフトの導入手順の案内、問い合わせの受け付け | よくある質問と手順、受け付け後の担当の決め方 |
カスタマーサポート | 製品の使い方、配送、返品などの一次対応 | 公開FAQ、人に引き継ぐ条件 |
営業 | 製品情報や過去の提案資料の検索 | 資料の置き場所と閲覧権限 |
どの部門でも、最初から全部を任せるより、問い合わせの多い数種類に絞って始め、答えられなかった質問を見ながら資料を足していくほうがうまくいきます。個人情報や医療・金融の判断を扱う場合は、答えの範囲と人に引き継ぐ条件を先に決めておく必要があります。
6. Copilot StudioとiPaaSの連携活用
Microsoft Copilot Studioは単なるAIチャットボット作成ツールではなく、ビジネスシステム全体と統合できる強力なプラットフォームです。特にiPaaS(Integration Platform as a Service)機能と組み合わせることで、そのポテンシャルは大きく広がります。この章では、Copilot StudioとiPaaSを連携させた活用方法について詳しく解説します。
6.1 Power Platformコネクタの活用方法
Copilot Studioは、Microsoft Power Platformの一部として、1,000種類を超える事前構築されたコネクタにアクセスできる点が大きな強みです。これらのコネクタを活用することで、様々なデータソースやサービスとの連携が可能になります。
Power Platformコネクタを活用するための基本的な手順は以下の通りです。
- Copilot Studioのプラグイン設定画面で「接続の追加」を選択
- 必要なコネクタを検索して選択(例:SharePoint, SQL Server)
- 認証情報を入力して接続を確立
- コネクタが提供するアクションやトリガーをカスタムコパイロットに組み込む
Microsoft Power Platformのコネクタは、コードを書かずにさまざまなシステムと連携できる「ローコード統合」の核となる機能です。これにより、IT部門だけでなく、業務部門のユーザーでもデータ連携を実現できます。
たとえば、営業チーム向けのカスタムコパイロットを作成し、Salesforceのデータを参照して「先月のトップ顧客は誰?」という質問に答えられるようにしたり、「顧客AのXYZ製品の注文状況を教えて」という質問に対して、ERPシステムから最新の注文状況を取得して回答したりすることが可能です。
6.2 プロンプトビルダーとフロープラグインの連携
Copilot Studioの強力な機能の一つが、プロンプトビルダーとPower Automateフロープラグインの連携です。これにより、AIの自然言語処理能力とビジネスプロセスの自動化を組み合わせることができます。
6.2.1 プロンプトビルダーの活用
プロンプトビルダーは、特定のビジネスタスクに特化したAIプロンプトを構築、テスト、デプロイするためのツールです。単なるチャットではなく、ビジネスデータに基づいた具体的な行動を促すためのプロンプトを設計できます。
プロンプトビルダーでできることの例は以下です。
- 顧客の問い合わせ履歴に基づいたレスポンス生成
- 製品マニュアルから抽出した情報に基づくトラブルシューティング
- 社内規定に沿った申請書の自動作成補助
- マーケティング資料のトーンや内容の一貫性確保
プロンプトビルダーの真価は、単なる静的な回答ではなく、コンテキストに応じて動的に変化する対話体験を提供できる点にあります。これにより、ユーザーは自然な会話の流れの中で複雑なタスクを完了できるようになります。
6.2.2 Power Automateフロープラグイン
Power Automateフロープラグインを使用すると、ユーザーとの会話の中で自動化ワークフローをトリガーできるようになります。例えば、以下のようなシナリオが可能です。
- ユーザーが「新しいプロジェクトを始めたい」と伝える
- コパイロットが必要な情報(プロジェクト名、期間、予算など)を会話形式で収集
- 収集した情報に基づいて、Power Automateフローを起動
- フローがプロジェクト管理システムで新規プロジェクトを作成し、関係者にメールで通知
- コパイロットがユーザーに完了を報告し、次のステップを案内
以下は、Power Automateフロープラグインを実装するための基本的な手順です:
- Power Automateで目的のワークフローを作成(例:「新規プロジェクト作成フロー」)
- フローの入力パラメータを定義(プロジェクト名、開始日、予算など)
- Copilot Studioでカスタムコパイロットを作成または編集
- エージェントの「ツール」としてフローを追加する(画面名は更新で変わるため、最新手順はMicrosoft Learnを参照)
- 適切なフローを選択し、パラメータのマッピングを設定
- 会話フローを設計して、必要な情報を収集する対話を構築
この連携により、「Microsoft Plannerのタスクを見せて」といった簡単なリクエストでも、バックグラウンドではPower Automateがタスク情報を取得し、それをCopilotが理解しやすい形で表示するという複雑なプロセスが実現します。
Power Automateやエージェントフローをツールとして追加すると、会話の中からフローを呼び出してデータを取ったり処理を進めたりできます(Microsoft Learn)。
6.3 ISVとの統合とAI Builder GPTプロンプトの活用
Copilot Studioは、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)との統合や、AI Builder GPTプロンプトの活用によって、さらに機能を拡張することができます。
6.3.1 ISVとの統合
ISVは、Copilot Studioのエコシステムを拡張するサードパーティのソリューションを提供しています。これらのソリューションは、特定の業界や業務プロセスに特化した機能を追加し、Copilot Studioの適用範囲を広げます。
以下の項目はISV統合の主なメリットです。
- 業界特化型のAIソリューション(医療、金融、製造業など)へのアクセス
- 専門的なワークフローや分析機能の追加
- 既存のビジネスアプリケーションとのシームレスな連携
- 導入・運用の迅速化と専門的なサポート
ISVパートナーの例としては、以下のような企業があります。
- Dataverse統合を強化する専門ツールを提供するベンダー
- 特定業界向けのAI分析モデルを提供するベンダー
- CRMやERPとのカスタム連携を提供するベンダー
ISVソリューションを活用することで、組織は自社の業務プロセスに最適化されたAIエクスペリエンスを短期間で構築することができます。これは特に、業界固有の規制や要件が存在する分野で重要です。
6.3.2 AI Builder GPTプロンプトの活用
AI Builder GPTプロンプトは、Microsoft Power Platformに統合されたAI機能の一つで、Copilot Studioと組み合わせることで強力なAIソリューションを構築できます。
AI Builder GPTプロンプトの主な機能
AI Builder GPTプロンプトをCopilot Studioと連携させることで、以下のようなシナリオが実現可能になります。
- ユーザーが複雑な質問をコパイロットに投げかける
- コパイロットはAI Builder GPTプロンプトを使って適切な応答を生成
- 生成された応答は組織のガイドラインやトーンに沿ったものになる
- 必要に応じて、追加情報の収集や他システムとの連携も行う
AI Builder GPTプロンプトの実装手順は以下です。
- プロンプト(旧AI Builder GPTプロンプト)を新規作成する。作成画面の場所は更新で変わるため、最新手順はMicrosoft Learnを参照
- プロンプトテンプレートの作成と必要なパラメータの定義
- テスト・調整を行い、最適なプロンプト設定を確立
- Copilot Studioのカスタムコパイロットに組み込む
Microsoft AI Builderのドキュメントによれば、GPTプロンプトは企業のナレッジベースと連携させることで、さらに精度の高い回答を生成することができます。
Copilot StudioとiPaaSの連携は、単なる自動化を超えて、ビジネスプロセス全体をインテリジェントに再構築する可能性を秘めています。適切に設計・実装することで、業務効率の大幅な向上と、より価値の高い顧客体験の創出が可能になります。
導入前に確認したい3つのこと
Copilot Studioの導入でつまずきやすいのは、ツールの操作より手前の準備です。始める前に、次の3つを確認しておくと進めやすいです。
- どの問い合わせを任せるか:件数の多い質問や手続きを数種類に絞る
- 答えの元になる資料があるか:規程や手順書が最新で、エージェントが読める場所に置かれているか
- 利用量の見込み:月にどのくらい使われるかを見積もり、容量パックか従量課金かを決める
よくある質問
Q. Copilot Studioとは何ですか?
Copilot Studioは、Microsoftが提供する自社専用のAIエージェントを作るローコードのツールです。社内規程やWebサイトを知識として登録し、TeamsやWebサイト上で質問に答えさせたり、Power Automateと組み合わせて手続きを進めたりできます。旧Power Virtual Agentsの後継にあたります。
Q. Copilot Studioの料金はどのように決まりますか?
2026年10月時点のMicrosoft Learnの説明では、Copilot Studioはエージェントの利用量をCopilot Creditsという単位で数えて支払う仕組みで、容量パックの前払い、Azure経由の従量課金、1年分の事前購入から選べます。金額は契約形態で変わるため、Microsoftの公式料金ページか販売パートナーで確認してください。
Q. Microsoft 365 CopilotとCopilot Studioの違いは何ですか?
Microsoft 365 Copilotは、Word・Excel・Teamsなどの中で個人の作業を手伝う、すでに用意されたAIです。Copilot Studioは、自社の資料や業務に合わせたAIエージェントを作るためのツールで、作ったエージェントをMicrosoft 365 Copilotの中から呼び出すこともできます。
Q. Copilot Studioは無料でどこまで使えますか?
Microsoft Learnの説明(2026年10月22日更新)では、エージェントを作る人のライセンスは無料だが、テナントにCopilot Creditsの前払い容量があることが前提になっています。試用ライセンスでは作成と試験はできても、エージェントの公開はできません。前払いを使わず、Azureの従量課金で始める方法もあります。
この記事の料金と仕組みは、2026年10月22日更新のMicrosoft Learn「Copilot Studioのライセンス」をもとにしています。仕組みは変わることがあるため、導入前に公式情報を確認してください。
Copilot Studioに限らず、AIの導入で最初に決めるべきなのは「どの仕事を任せるか」です。自社の業務のどこから手を付けるか迷っている段階なら、まずは現在地を知るところからで十分です。
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