Google広告のCPA悪化はアカウント構造を作り直す|実例で学ぶ設計の組み立て方
「CPAが毎月、じわじわ悪化している」
代理店との月次ミーティングで、この報告を何度も聞いている経営者は多いはずです。入札戦略を調整しても、広告文を変えても、キーワードを追加しても、改善は一時的。気づけば元の水準に戻り、しばらくするとさらに悪化していく。
このパターンに陥ったとき、多くの代理店が提案するのは「入札の見直し」「キーワードの追加・除外」「広告文のABテスト」といった配信の調整です。でも悪化が構造から来ている場合、これらはどれも対症療法にしかなりません。治すには、アカウント構造そのものを作り直す必要があります。
前回の記事(広告費を月数百万使ってるのに効果が見えない経営者へ)では、CV価値の階段設計という広告の「ゴール設計」の話を書きました。今回はその続編として、配信側のアカウント構造をどう作り直すかを扱います。ゴール設計が広告運用のエンジンなら、アカウント構造はトランスミッション。両方が揃って初めて、広告費が事業成果に変わります。
この記事では2つの実例を使います。1つは、5つの診療領域で検索広告を出している医療系の顧客のアカウント再設計です。もう1つは、私自身の会社(f2t)の小さなアカウントで起きた失敗です。医療系の顧客の再設計はまだ効果検証の途中なので、改善後の数字は書いていません。書いているのは、作り直す前に何が起きていたか、そしてどう判断したかです。
この記事の結論
- 問題の正体:CPA悪化の多くは入札や広告文ではなく、アカウント構造に原因がある。配信の調整では治らない
- 改修手順:キャンペーン→アドグループ→キーワード→広告文の順に、上から作り直す。逆順は手戻りを生む
- キャンペーン設計:エリアと商材の両軸で分けるのが最大形。ただし最適化の対象になる成果が月30件前後に届かない単位まで分けると、広告のAIが学習できなくなる
- アドグループ設計:広告を作る側の想定ではなく、実際に成約した人の検索語から「軸」と「掛け合わせ」を決める
- キーワード設計:成約データから逆算する。成約ゼロの語句は、クリックが多くても除外に回す
- マッチタイプ:完全一致を主軸にし、インテントマッチを補助に添える
- KPI:CPAに加えて完全一致比率とクオリティスコアを月次で追う。問い合わせの単価だけで良し悪しを判断しない
- 展開:一気に全部を切り替えず、1領域で検証してから段階的に広げる。学習期間の2〜3週は数字を見て動かない
なぜアカウント構造が広告ROIを決めるのか
まず、アカウント構造という言葉に馴染みがない方のために、最低限の共通言語を揃えておきます。
Google広告のアカウントは、こういう階層で出来ています。
- アカウント(一番上)
- キャンペーン(予算配分と入札戦略の単位)
- アドグループ(キーワードと広告文をまとめる単位)
- キーワード・広告文(実際の配信内容)

この階層が、広告のAIが学習する単位になります。Google広告のAIはキャンペーン単位で予算を配分し、アドグループ単位で広告を出し分け、キーワード単位で入札を調整します。つまりアカウント構造は、AIに「何を基準に最適化してほしいか」を教える設計図です。
構造が崩れていると、何が起きるか
アカウント構造が雑だと、AIは学習の方向を見失います。具体的にはこういう現象が起きます。
1つ目は学習データの分散です。1つのアドグループに複数の商材が混ざっていると、AIはそのグループで何を最適化すべきかを判断できません。結果として、どの商材にも中途半端な配信になります。
2つ目は予算配分の歪みです。キャンペーンが適切に分かれていないと、成果が出ている領域にも出ていない領域にも同じように予算が流れます。
3つ目はコンフリクトです。複数のアドグループに同じキーワードが入っていると、意図しない広告文やページが表示されたり、成果のデータが分かれて学習が遅れたりします。なお、同じアカウントの中で自社の広告同士が入札価格を吊り上げ合うことはありません。オークションに参加するのは、その検索語句に対して優先されるキーワード1つだけです。
これらは運用を続けるほど深刻になります。最初は小さな設計ミスでも、半年、1年と経つうちに広告費の大きな無駄として積み上がります。
実例:想定で分けた構造を5.7か月動かした結果
医療系の顧客のアカウントは、作り直す前に11のキャンペーンと30以上のアドグループに分かれていました。アドグループは「他院の名前」「病名・症状」「治療法」「治療後の再発」の4つに分けてあり、どれも広告を作る側が「こういう人が検索するはずだ」と想定して決めたものです。
この構造で5.7か月配信した結果を並べると、想定と実態のずれがはっきり出ました。ある地域の「病名・症状」グループは、約1,000クリック・約31万円で問い合わせが1件でした。「他院の名前」のグループは5領域を合わせて電話の問い合わせが14件ありましたが、カウンセリングに来た人も契約した人も0人でした。使った費用は約63万円以上です。
もっと重かったのは、この間の問い合わせ1件あたりの単価が悪くなかったことです。問い合わせの件数は出ていて、管理画面の数字は「好調」に見えていました。ところが、ある地域のある領域では約1,000万円を使い、カウンセリングに来た人は0人でした。問い合わせの単価だけを見ていたせいで、その先で止まっていることに気づくのが遅れました。
そこで、実際にカウンセリングまで来た人と契約した人、合わせて75人が広告をクリックする前に何と検索していたかを分類しました。表の「部位×症状」は「〇〇 痛み」のような検索、「別の領域から」は別の診療領域のキーワード経由で来た人です。
検索のされ方 | 人数(割合) |
|---|---|
医院名 | 27人(36%) |
部位×症状 | 21人(28%) |
治療の名前 | 13人(17%) |
病名 | 9人(12%) |
別の領域から | 5人(7%) |
他院の名前 | 0人(0%) |
「他院の名前」は、グループを作った時点では有望に見えていた分類です。実際に来院まで進んだ人の中には1人もいませんでした。反対に、一番多かったのは医院名そのものでの検索でした。構造を作り直すときの起点は、こうした実際の成約者の検索語です。
入札調整では治らない理由
構造が崩れた状態で入札を調整しても、効果は限られます。入札調整は「今の構造の中での最適化」でしかないからです。間違った方向を向いた車のアクセルを踏むようなもので、スピードは出ても目的地からは遠ざかります。
入札の設定ひとつで、配信先そのものが変わってしまうこともあります。これは私の会社のアカウントで実際に起きました。
クリック単価が高すぎると感じ、入札方式を「クリック数の最大化」にして、1クリックの上限を150円に設定しました。ところが、Google検索の結果ページで実際にかかっていたクリック単価は370〜550円でした。上限150円ではこの枠に入札が届きません。1日1,000円の予算は、Google以外の提携サイトに出る検索広告(検索パートナー)へ丸ごと流れていきました。
2026年8月4日から9月2日の30日間で、クリックは1,492回、費用は約3万円、問い合わせは0件でした。そのうち1,485回、つまり99.5%が検索パートナーからのクリックで、Google検索からのクリックは7回だけでした。管理画面にはクリック率24%、クリック単価20円という一見優秀な数字が並んでいました。ところがサイトでの平均滞在時間は25秒で、自然検索から来た人の129秒と比べると5分の1以下です。
1か月近く気づけなかったのは、毎週動かしていた監視の仕組みが、クリックがどの配信面から来たかを見ていなかったからです。9月3日に検索パートナーへの配信を止め、上限を500円に引き上げました。あわせて、配信面ごとのクリックの割合を監視項目に加えています。入札単価の数字だけを見ていても、この種の問題には気づけません。予算がどの配信面に流れているかまで、アカウントの設定を点検する必要があります。キャンペーンやアドグループの分け方だけでなく、配信面の設定も「構造」の一部として見ておくべきです。
構造改修の全体像:4ステップで作り直す
アカウント構造の改修は、上から順番に行います。キャンペーン→アドグループ→キーワード→広告文、という順序です。
ステップ | 対象 | やること |
|---|---|---|
1 | キャンペーン | エリア×商材を、データが足りる範囲で分ける |
2 | アドグループ | 成約者の検索語から軸と掛け合わせを決める |
3 | キーワード | 成約クエリを基準に再抽出する |
4 | 広告文 | アドグループ単位で最適化する |
この順序にするのは、下の階層が上の階層に依存するからです。アドグループはキャンペーンの構造が決まらないと決められず、キーワードはアドグループが決まらないと整理できません。逆順で進めると必ず手戻りが出ます。
ステップ1: キャンペーンを「エリア×商材」で分ける
最初のステップは、キャンペーンの切り方の見直しです。
多くの会社のキャンペーンは、「エリア」か「商材」のどちらか片方で切られています。複数エリアで複数の商材を扱う事業なら、両方の軸で分ける形が考えられます。ただ、先に決めるべきなのは分ける軸ではなく、どこまで分けてよいかの基準です。
基準は、1つのキャンペーンで最適化の対象にする成果が月30件前後集まるかどうかです。これを下回る単位まで分けると、Google広告のAIが学習できなくなります。まず成果が集まる単位を確かめ、その範囲の中で分けていきます。
データが足りるなら「エリア×商材」まで分ける
成果が十分に集まる事業なら、エリアが3つ、商材が4つで、キャンペーンは3×4の12個まで分けられます。

こう分けると、好調なエリアと商材の組み合わせだけに予算を寄せられます。商材ごとに粗利が違うなら、目標CPAも個別に設定できます。どの組み合わせが強く、どこが弱いかも見えるようになります。全体の平均で見ている限り、弱い領域は強い領域に隠れて見えません。
分けすぎるとAIが学習できない
ただし、この記事の初版で私は「12キャンペーンが基準で、運用の手間は気にしなくていい」と書きました。その後、医療系の顧客の再設計を進めるなかで、この書き方は言い過ぎだったと考えを改めています。
このアカウントは地域ごとに4つのキャンペーンを持っていました。ところが成果の件数が少ない地域では、どのキャンペーンも学習に必要な量のデータが集まらず、自動入札がうまく働いていませんでした。そこで地域別のキャンペーンをやめて全国1本にまとめ、地域の差は入札の調整で付けることにしました。再設計案では、キャンペーンを11から6(診療領域ごとの5本と医院名検索の1本)に、アドグループを30以上から21に減らしました。例外として、検索のされ方がほかと明らかに違う1つの地域だけは、別のキャンペーンに切り出す方針です。
月30件前後の成果が集まるなら、分けたほうが予算を細かく寄せられます。集まらないなら、まとめたうえで入札の調整で差を付けたほうが、AIの学習は早く進みます。
運用の手間が増えることを理由に分割を断る代理店もあります。ここで判断の基準にすべきなのは手間ではなく、データが足りるかどうかです。データが足りるのに手間を理由に分けないのは代理店の都合です。データが足りないのに見た目の整理のために分けるのは、逆に成果を落とします。
ステップ2: アドグループを「軸と掛け合わせ」で整理する
キャンペーンの構造が決まったら、次はアドグループの設計です。実はここが一番のボトルネックになりやすい部分です。
アドグループはキーワードと広告文をまとめる単位です。同じアドグループ内のキーワードには同じ広告文が出るので、検索意図が近いもの同士をまとめる必要があります。
「軸」と「掛け合わせ」とは
検索キーワードを整理するときに、私は「軸」と「掛け合わせ」という考え方を使っています。
- 軸:商材の本体を表す言葉(例:商材のカテゴリ名、治療の名前、病名)
- 掛け合わせ:軸と組み合わせて検索される言葉(例:症状や悩みの表現、疑問文、地域名、比較の言葉)
軸と掛け合わせを組み合わせると、「軸1 × 症状」「軸1 × 疑問」のように、1つのアドグループに入れるキーワードが自然に出てきます。

なぜこの整理法が効くのか
同じ軸のキーワードは、同じ商材を探している人の検索です。そこに違う掛け合わせが付くことで、検討段階や悩みの違いを分けて扱えます。検索意図が揃っていると刺さる広告文を書きやすく、意図がバラバラだと当たり障りのない広告文しか書けません。検索語句と広告文とランディングページの関連性が上がれば、Googleからの品質評価も上がり、クリック単価の削減につながります。
成約者データを起点にする
軸と掛け合わせは、想像ではなく過去の成約者の検索語から決めます。前の章の医療系の顧客の例でいえば、もともとのアドグループは「他院の名前」「病名・症状」「治療法」「治療後の再発」でした。成約者の検索語を分類した結果をもとに、他院の名前のグループは廃止し、一番多かった医院名での検索を独立した柱として扱う形に組み直しました。
過去6か月〜1年の成約データから、成約した人の検索語をすべて抜き出して分類すると、軸になる言葉と掛け合わせで使われる言葉に自然に分かれます。この分類はAIに手伝わせても構いませんが、最後は人間が確認すべきです。AIは過去データを統計的に分けるので、事業側の戦略の意図を反映できないことがあります。
こうして作ったアドグループに、どんなRSA(レスポンシブ検索広告)を何本入れるか、既存の見出しをどう引き継ぐかは、8キャンペーン・84本のRSAを設計した実例で工程ごとに書いています。
ステップ3: キーワードを「成約クエリ」から再抽出する
アドグループの骨格が決まったら、各アドグループに入れるキーワードを決めます。
すべてを成約データから逆算する
原則は、成約に至った検索語(検索クエリ)を起点にすることです。手順はこうです。
- 過去6か月〜1年の成約データをすべて抽出する
- 各成約の前に、どの検索語で広告がクリックされたかを特定する
- その検索語が、設計したアドグループのどこに属するかを分類する
- 分類しきれない語句は、新しいアドグループの候補として別に保管する
これで、成約実績のあるキーワードがアドグループごとに揃います。これが新しい構造の骨格になるキーワードで、以下では「シードキーワード(種になるキーワード)」と呼びます。逆に、問い合わせは出ているのにその先の来院や成約にまったくつながらない語句は、クリックが多くても除外キーワードに回します。医療系の顧客では、他院の名前のキーワードをこの判断で除外しました。ただし、他社名のキーワードが成約につながる業種もあります。成約ゼロの原因がページや条件の側にある可能性もあるので、自社の成約データで確かめてから判断してください。
拡張は最小限に抑える
シードキーワードが揃うと、関連キーワードをたくさん足したくなります。でも成約実績のないキーワードは、広告費を食うだけのことが多いです。始めは表記ゆれ(漢字・ひらがな・カタカナの違い)と小さなバリエーションだけを足し、データが貯まってから実績に基づいて広げます。
アカウント全体で「コンフリクト」を排除する
同じキーワードが複数のアドグループに入っていると、どのアドグループの広告が出るかを運用する側が決められなくなります。検索語句に合わない広告文やページが出てクリック率や品質の評価が下がり、成果のデータも分かれてしまいます。改修時には全キーワードを一覧にし、どのキーワードをどのアドグループに置くかを一対一で決めます。重複があれば自然なほうに残し、もう一方は削除するか除外キーワードにします。地味な作業ですが、狙った広告文が狙った検索に出るようになるので、構造改修の効果を正しく測れるようになります。
ステップ4: マッチタイプは完全一致を主軸に
キーワードを決めたら、マッチタイプを設定します。マッチタイプは、登録したキーワードを「どこまでの検索語句に広げて配信するか」の指定で、Google広告には3種類あります。
- 完全一致:登録キーワードとほぼ同じ意味の検索語句だけに配信
- フレーズ一致:登録キーワードの意味を含む検索語句に配信
- インテントマッチ(旧称:部分一致):検索意図が近いと判断された語句に広く配信

Googleは一番広いインテントマッチを推奨しています。AIの学習範囲を広げたほうが最適化が進む、という主張です。
インテントマッチの落とし穴
実際の運用では、インテントマッチに任せすぎて広告費を浪費するケースがとても多いです。AIが「関連性が高い」と判断した語句が、事業側の意図とずれることがよくあるからです。似た響きの別の商材を探している人に広告が出て、クリックは取れても成約にはつながりません。1クリック数百〜数千円の高単価な商材では、これが月の広告費の大きな割合を占めることもあります。
完全一致を主軸にする考え方
私が採っている方針は、完全一致を配信の主軸に据えることです。検索された語句に完全一致のキーワードで広告が出ている状態が、広告配信の理想形です。100%は無理ですが、完全一致比率をKPIに置いて少しずつ上げていきます。ただし完全一致に寄せるほど、配信の量は細ります。完全一致は無駄なクリックを減らすのには効きますが、獲得の量を増やすのには限界があります。成果が安定したら、検索語句レポートを見ながらインテントマッチを少しずつ足して広げていきます。
ただ、完全一致だけでは困る場面もあります。検索数の少ないキーワードは「検索ボリュームが少ない」と判定され、ほとんど配信されないことがあります。その保険として、インテントマッチは完全には消さずに補助として残します。具体的には、成約実績の確かなキーワードを完全一致で固め、検索数を補いたい領域に絞ってインテントマッチを添えます。検索語句がキーワードと同じ場合は完全一致のキーワードが優先されますが、少し違う語句ではどちらが使われるかは広告ランクで決まります。インテントマッチを添えたキーワードは、検索語句レポートでどの語句に出ているかを定期的に確認します。
フレーズ一致は主軸にはしません。ただ、インテントマッチだと広がりすぎる領域では、完全一致とフレーズ一致の組み合わせで入稿することもあります。どのマッチタイプを添えるかは、検索語句レポートでどれだけ意図のずれた語句が混ざるかを見て決めます。
マッチタイプを切り替えたときの動き
完全一致を主軸に切り替えると、短期的にはクリック数が減ります。配信の幅を狭めているので当然です。でもクリックの質が上がるので、成約率が改善し、結果としてCPAが下がります。代理店から「クリック数が減りました」と報告があっても、見るべきは成約数とCPAです。
KPIの置き方:CPAの手前と先を見る
アカウント構造を作り直すと、CPA以外にも追うべき指標が出てきます。
クオリティスコアとは何か
クオリティスコアは、Google広告がキーワードごとに付ける10点満点の品質評価です。推定クリック率、広告の関連性、ランディングページの利便性の3つで決まり、クリック単価に直結します。スコアが高いキーワードほど、同じ掲載順位を安いクリック単価で取れます。
自動入札が主流になってから、クオリティスコアを個別に追う運用は減りました。でもアカウント構造を手で作り込む場合は、改修が正しい方向に進んでいるかを判断する大事な材料になります。成果の柱になっている上位のキーワードについて、改修前と改修後のスコアを比べます。上がっていれば構造の改修が効いています。下がっていれば、構造のどこかに問題がある可能性が高いです。
完全一致比率とクオリティスコアをセットで追う
私がKPIとして勧めるのは、次の2つです。
- 完全一致比率:全広告費のうち、完全一致のキーワード経由で使われた割合
- クオリティスコア:成果の柱になっている上位キーワードのスコア(アカウント全体の平均は管理画面の標準機能では出ないので、上位キーワードを見るのが現実的です)
この2つが月次で改善していれば、CPAの改善はその後についてきます。CPAが一時的に悪化していても、2つが改善傾向なら構造の改修は正しい方向に進んでいます。
問い合わせの単価だけで判断しない
もう1つ大事なのは、CPAの「先」を見ることです。医療系の顧客で約1,000万円を使ってカウンセリングに来た人が0人だった例では、管理画面の問い合わせ単価は良く見えていました。問い合わせの件数だけを広告のAIに学習させると、AIは問い合わせは多いが契約しない層を上手に集めてしまいます。
このアカウントでは成果を4段階に分けました。問い合わせ、有効な問い合わせ(電話とフォームのうち中身のあるもの)、カウンセリング、契約の4つです。問い合わせは参考の数字に下げ、有効な問い合わせ以降を最適化の対象にする設計にしました。成果の段階の設計は、CV価値の階段設計の記事で詳しく書きました。
数字そのものが正しく届いているかも見る
指標を増やすときは、その数字が正しく集計されているかも同時に見られるようにしておきます。先ほどの私の会社の例では、監視の仕組みが配信面ごとの内訳を見ていなかったせいで、1か月近く問題に気づけませんでした。
医療系の顧客の集客・営業ダッシュボードでは、データの集計が遅れていないか、欠けていないかを示す表示を画面の上に常に置く設計にしました。広告の成果データは、連携の遅れや取り込みの失敗で、ある日から静かに欠けることがあります。欠けたまま「成果が落ちた」と判断して予算を動かすと、構造を正しく直しても判断を誤ります。
検証と本番展開:安全に進めるためのリスク管理
アカウント構造の大規模な改修は、事業への影響が大きい作業です。いきなり全部を切り替えると、想定外のことが起きます。
「一気に全部」は避ける
一番やってはいけないのは、全キャンペーンを同時に新しい構造へ切り替えることです。新構造に設計ミスがあれば、配信が一斉に止まったりCPAが急に悪化したりします。旧構造を削除していると、戻すのにも相当な手間がかかります。
段階的な検証の設計
安全な進め方は、1つの領域で検証し、成功を確認してから他の領域に広げることです。

- 検証領域を選ぶ:影響が限られ、データが取りやすい領域を1つ選ぶ。あるエリアの1商材だけ、といった小さな範囲
- 新旧を比べられる形にする:Google広告の「テスト」機能で配信を新旧に分けるか、対象の領域だけ旧キャンペーンを一時停止して新構造に切り替え、2〜4週間データを貯める。同じ領域で新旧のキャンペーンを同時に動かすと、どちらの広告が出るかが混ざって比較になりません
- 成果を判定する:CPA、クオリティスコア、完全一致比率、成約率で新構造が旧構造を上回るかを確認する
- 段階的に広げる:上回っていれば、他のエリアや商材に1つずつ同じ構造を展開する
学習期間の扱い方
新しいキャンペーンや構造の変更があると、Google広告のAIは再学習に2〜3週間かかります。この期間はCPAや配信数が一時的に悪化するのが普通です。ここで焦って元に戻すと、学習がリセットされて最初からやり直しになります。対応の基本は、「学習期間中は日々のCPAの上下で入札や構成をいじらない」と事前に決めておくことです。代理店にも社内にも、このルールを先に共有しておきます。ただし、設定ミスによる異常は例外です。想定外の配信面に予算の大半が流れていないか、狙っていない語句で予算が急に減っていないかは、切り替えた初日から確認します。私の会社の検索パートナーの件は、まさにこの確認が抜けていた例です。
大型連休のタイミングに注意
ゴールデンウィーク、お盆、年末年始の前後は、大きな改修を避けるのがセオリーです。連休中は検索する人の行動が普段と違い、そのデータで学習が進むと、平常時の最適化がずれることがあります。改修は、連休が明けて1〜2週間たち、数字が平常に戻ってから行うのが安全です。
代理店との定例で経営者が確認したい5つの質問
ここまでの内容を、代理店との月次の打ち合わせでそのまま使える質問にしておきます。答えに詰まる項目があれば、そこが見直しの入り口です。
- CPAの悪化は、入札や広告文ではなくアカウントの構造や設定から来ていないか。配信面の内訳まで見たか
- 各キャンペーンで、最適化の対象にしている成果は月30件前後集まっているか。細かく分けすぎていないか
- 登録しているキーワードは、実際に成約した人の検索語とずれていないか
- 問い合わせの単価だけでなく、その先の来店・商談・契約まで数字を追えているか
- 構造を変えるときは、一斉に切り替えず、1つの領域で新旧を比べてから広げる計画になっているか
広告運用は、配信ではなく設計の仕事
この記事で扱ったアカウント構造の改修は、配信作業ではなく設計作業です。どのキーワードに入札するか、どの広告文を出すかという実行の話ではなく、事業の成果をどう広告の仕組みに反映させるかという構造の話です。
多くの中小企業が広告運用で苦戦しているのは、この設計を代理店に丸投げしているからだと感じます。代理店は配信の専門家ですが、どの顧客が本当に事業の役に立つのかを一番知っているのは経営者です。医療系の顧客の再設計でも、構造を決めたのは管理画面の数字ではなく、実際にカウンセリングに来て契約した75人の検索語でした。
医療系の顧客の再設計は、この記事を書いている時点でまだ効果検証の途中です。結果が出たら、この記事に追記します。
自社のアカウント構造に不安があるなら、一度、成約データを起点にした設計の見直しをしてみる価値があります。今のキーワード、アドグループ、キャンペーンが事業の実態と合っているか。代理店とは別の視点で見ると、改善の余地が見えることが多いです。
広告やデータの仕組みを、どこから見直せばよいか迷っている方へ。
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