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バックオフィス業務の自動化はどこから始めるか。経理・総務・労務で今日できることを分ける

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バックオフィス業務の自動化はどこから始めるか。経理・総務・労務で今日できることを分ける

バックオフィスは、自動化に一番向いているのに、一番後回しにされます。

理由ははっきりしていて、売上に直結しないからです。限られた予算と時間をどこに使うかという話になると、営業や集客の話が先に来る。経理の入金確認や、総務の日程調整や、勤怠の集計は「まあ、今のやり方で回っているから」で毎回後ろに送られます。回ってはいるんです。誰かが月末に遅くまで残って、手で回している。

この記事では、バックオフィスを経理・総務・労務の3つの範囲に分けて棚卸しします。それぞれの業務を、今日からAIに下書きを任せられるものと、システム同士をつなぐ工事が先に要るものに仕分けていきます。読み終わったときに、自社のどの引き出しから開ければいいかが決まっている状態を目指します。

私はAIエージェント(人の指示を受けて作業を代行するAIの仕組み)を自分の業務で毎日動かしている実装者ですが、同時に一人で会社をやっているので、請求書も経費も自分で処理しています。経理も総務も労務も自分の仕事です。この記事の話は、その実務と、中小企業から受けている相談の両方がベースです。

後回しにされる理由と、先送りの請求書

バックオフィスが後回しになるのは、3つの条件が重なるからだと思っています。

売上に直結しないので優先度が上がらない。担当者が少人数か社長兼務なので、改善を提案する立場の人がいない。そして忙しさが月末月初に集中するため、平時に見ると問題が見えない。この3つ目が厄介で、改善を考える余裕がある時期には課題が見えず、課題が痛いほど見える時期には改善している暇がない、という構造になっています。

ところが実務の性質だけ見ると、バックオフィスは自動化の練習場としてかなり優秀です。毎月同じ手順を繰り返す。新人に引き継ぐための手順書が書ける、あるいはすでにある。出力の間違いは社内で気づけて、直せば済むものが多い。営業や企画の仕事より、はるかに機械に渡しやすい形をしています。

どの業務がAIに向くかという一般的な判定の軸はAI業務効率化はどの業務から始めるかに書いたので、ここでは繰り返しません。この記事は、その軸を通した後の話として、バックオフィスの中身を範囲別に開いていきます。

下書きが要る仕事と、つなぐ工事が要る仕事に分ける

棚卸しの前に、仕分けの線を1本引いておきます。バックオフィスの業務は、大きく2種類しかありません。

種類

中身

何をすれば動くか

着手までの距離

下書き型

文章を書く、要約する、分類する

AIのチャット画面に貼って指示する

今日できる

連携型

データを別のシステムに移す、突き合わせる

ソフトの設定か、つなぐ仕組みの構築

段取りが要る

見分け方はひとつです。その作業をしている人が、頭を使っているのは文章か、それとも突き合わせか。案内文や督促文や議事録は文章なので下書き型。入金と請求の照合や、勤怠データの集計は突き合わせなので連携型です。

この線を引かずに「バックオフィスをAIで効率化しよう」と始めると、話が必ず大きいほうに引っ張られます。基幹システムとの連携、専用ツールの導入、見積もりを取って半年。そうしているうちに、今日ChatGPTに貼れば5分で終わる案内文を、来月も手で書くことになります。分けてください。分ければ、片方は今日始まります。

その前に、契約中のソフトの自動化機能を使い切る

順番の話をひとつ。AIで作ろうとしている機能が、すでに契約しているソフトに入っていることが本当に多い。ここを先に潰すと、費用ゼロで片付く業務がいくつか出てきます。

私の例を書きます。毎月の請求書は、会計freeeの作成予約という機能で下書きが自動生成されるようにしています。設定した日に下書きができて、指定したメールアドレスに「作成しました」と通知が来る。私は5日に通知を受け取って、下書きを開いて、件名の月がずれていないかだけ確認して送信します。かかる時間は30秒ほどです。

この機能で押さえておくとよい点が2つあります。ひとつは、入口が請求書の編集画面ではなく設定側にあること。探しても見つからないという声をよく聞きますが、たいてい見ている場所が違います。もうひとつは、自動送付まではできない仕様だということ。ヘルプにも明記されていて、下書きの作成と社内への通知までが機能の範囲です。

最初は物足りなく感じましたが、今はこの仕様が正しいと思っています。請求は金銭のやり取りなので、月ズレ、解約後の請求継続、金額改定の反映漏れが起きたときの痛みが大きい。人が送信ボタンを押す設計のほうが安全です。バックオフィスの自動化は、全部を無人にすることが目的ではありません。

やることはシンプルで、契約中の会計ソフト、勤怠ソフト、販売管理ソフトのヘルプを開いて「自動」「予約」「連携」で検索する日を半日作るだけです。追加費用はかかりません。ここで残ったものが、AIや外部の仕組みの出番になります。

経理は、数字ではなく文章の部分から手をつける

経理まわりを4つに割って、それぞれの位置づけを書きます。

請求書の発行は、ほぼ連携型で、しかも上に書いたとおり会計ソフトの機能で足ります。毎月同じ金額を同じ相手に請求しているなら、AIを持ち出す前に定期請求の設定です。

経費精算と仕訳も連携型です。銀行口座やカードをソフトに連携して、自動仕訳のルールを育てる。この領域はソフト側が長年かけて作り込んでいるので、自作の仕組みで勝てる場面はほとんどありません。使い倒すのが正解です。

入金消込は、連携型の中で一番てこずるところです。振込名義が請求先と違う、2件分がまとめて入る、振込手数料が引かれていて金額が数百円合わない。だから完全一致だけを機械が消して、残りを人が見る設計にします。全件の自動照合を目指した瞬間に、例外処理の沼にはまります。他システムとのデータの受け渡しを自分で組むならワークフロー自動化ツールの領域で、入口はn8nで業務を自動化する入門にまとめました。

そしてAIが今日から効くのは、経理の中の文章の部分です。支払いが遅れている先への督促文。金額改定や振込先変更の連絡文。経理規程や精算ルールのたたき台。月次の数字を役員や金融機関向けの説明文にする作業。どれも「書き出しで手が止まる」タイプの仕事で、8割の下書きが出てくるだけで所要時間が変わります。経理担当が数字より文面で悩んでいる時間は、思っているより長い。

総務は、下書きを任せられる仕事の宝庫

総務は下書き型の宝庫です。上から順に、今日できるものを並べます。

日程調整は、AIより先に日程調整ツールを入れてください。候補日を3つ書いてメールを送り、返事を待ち、埋まっていて再提案する。この往復がリンク1本に置き換わります。地味ですが、社外との会議が多い会社ほど効きます。

議事録は、バックオフィスで最も外れにくい入口です。頻度が高く、手順が毎回同じで、要約が多少ずれても読めば気づける。会議の録音と文字起こしから議事録を自動生成する仕組みを組んだ記録は会議の議事録を自動化した話にあります。削減した時間を数えやすいので、社内に最初の成功例を作る用途にも向いています。

社内文書の作成も下書き型です。全社への案内文、規程の改定案、備品管理のルール、来客対応の手順書。ゼロから書く時間がなくなり、人の仕事は「うちの会社の事情に合わせて直す」ところに寄ります。

社内からの問い合わせ対応は、少し性質が違います。有給の申請はどこから出すのか、経費の締めはいつか、健康診断の日程はどうなっているか。総務の時間を最も細かく削るのがこの種の質問で、いわゆる社内AIチャットの出番に見えます。ただし、これは連携型に近い。社内文書が個人のパソコンやメールの添付に散らばっている状態でAIを入れても、答える材料がないので機能しません。

先に必要なのは、社内文書を1か所に集める作業です。地味な話ですが、これをやると、AIを入れる前の時点で問い合わせが減ります。集める過程で、古い版と新しい版が混在していたことにも気づく。順番としては、文書を集める、次にそれをAIに読ませる、です。

労務は、下書きと手続きを切り離す

労務まわりは、AIに任せる部分と人が押さえる部分の線引きが、他より少しシビアです。

勤怠の集計は連携型です。勤怠ソフトから出したデータを給与ソフトに渡す作業なので、まず両者の公式連携があるかを確認します。無ければ転記の自動化になり、ここは先ほどのワークフロー自動化ツールの領域です。手で転記している限り、月に一度、必ず数時間が消えます。

入退社の手続きは、下書き型と手続きが混ざっています。何をいつまでに集めるかのチェックリスト、本人への案内文、社内への通知文、貸与品の一覧。この部分はAIで作れますし、一度作れば次回から使い回せます。一方、届出そのものは正規のシステムと様式から出してください。AIが作った文面を原本にしない。ここは徹底したほうがいいと思っています。

就業規則や社内規程についての質問対応は、総務の社内問い合わせと同じ構造です。規程がどこにあり、どれが最新かが決まっていないと、何を入れても答えは出ません。

労務は法令や制度に紐づく判断が多く、その判断は人が持つ領域です。AIの置き場所は、聞かれる前に案内を用意しておく側。この配置にしておくと、事故が起きにくくなります。

バックオフィスだから引いておく3本の線

範囲を問わず、事務まわりで自動化を始めるときに決めておくことが3つあります。

1つ目は、個人情報と口座情報をそのまま貼らないこと。社員の氏名、口座番号、マイナンバー、取引先の担当者名。伏せてから使う、あるいは使わない。どこまでを入力していいかを社内で決めて、A4・1枚に書いておけば足ります。ルールの作り方は生成AIの社内ルールはA4・1枚でいいに独立してまとめました。

2つ目は、確定する操作は人が押すこと。請求書の送信、振込の実行、届出の提出、給与の確定。AIや自動化の仕組みは、その手前の下書きと確認材料の準備までで止めます。

3つ目は、AIの出力を原本にしないこと。保存や様式が決まっている書類は、正規のシステムから出したものを正とする。AIが作るのはあくまで下書きとチェックリストです。

この3本を先に引いておくと、社内で「勝手に使われたら怖い」という反対が出にくくなります。制限のためではなく、始めるための線引きです。

十数個の候補から1つを選ぶ

範囲別に棚卸しすると、たいてい十数個の候補が出てきます。そして全部やろうとして止まります。1つに絞ってください。

どれを選ぶかの判定軸は業務の選び方の記事に書いたので、ここではバックオフィス特有の補助線を2つだけ足します。

ひとつは、月末月初に固まっている業務から選ぶこと。この時期の1時間は、平時の1時間より体感の重さが違います。効果が実感として伝わる場所を最初に選ぶと、次の1つに進みやすい。

もうひとつは、担当が1人しかいない業務を候補に入れること。属人化しているということは、手順が誰かの頭の中にしかないということです。AIに渡すために手順を書き出す工程そのものが、その会社の資産になります。効率化より先に、その人が休めるようになる価値があります。

1件目に無人化を選ばないこと。これだけは守ってください。下書きまでで止める設計から始めて、社内の信頼ができてから範囲を広げます。選んだ後の進め方は中小企業のAI導入は何から始める。90日で定着させる進め方に、担当者の決め方から効果の測り方まで整理してあります。どの範囲から着手して、次の四半期に何をつなぐかまで地図にする話はAI導入戦略・ロードマップにまとめています。

30秒の意味は、時間削減ではない

最初に書いた請求書の話に戻ります。毎月30秒。年に12回。時間削減としては、ゼロに等しい数字です。

それでも設定してよかったと思っているのは、請求を出し忘れる可能性が消えたからです。バックオフィスの自動化がもたらすものは、削減時間より「抜けが起きなくなる」ことの比重が大きい。請求漏れ、支払い遅延、届出の期限切れ、更新忘れ。どれも起きたときのコストが、削減できる作業時間より桁違いに大きいものばかりです。

売上に直結しないから後回し、という判断は、この観点が抜けています。バックオフィスの自動化は、増やす投資ではなく、落とさないための投資です。だから景気や売上の波と関係なく、いつ始めても効きます。

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この記事を書いた人:Tomo(F2T)。AIエージェント組織を自分の業務で毎日動かしている実装者です。このブログの記事は、すべてその実作業の記録から生まれています。

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