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エクセルへの転記作業をなくす3つの方法。手を付ける順番と費用の目安

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エクセルへの転記作業をなくす3つの方法。手を付ける順番と費用の目安

朝、メールを開くと注文書のPDFが3件届いている。開いて、日付と品番と数量を読んで、エクセルの受注管理表に打ち込む。昼過ぎにFAXで2件。夕方に電話で1件。1件3分の作業なので、誰も問題として口に出しません。それでも1日20件あれば1時間、月に20時間が消えます。

この作業が続いているのは、担当者の手際が悪いからではありません。会社の仕組みに、そういう形の穴が開いているからです。

私はAIエージェントを自分の業務で毎日動かしている実装者で、中小企業から業務自動化の相談を受けています。転記の相談は多い。この記事では、転記がなくならない理由を先に整理してから、なくす方法を手段の軽い順に3つ書きます。自社の転記がどのタイプかが分かれば、やることは決まります。

転記が消えないのは、システムの隙間を人が埋めているからです

転記は、単体で見れば面倒な入力作業ですが、構造で見ると別のものが見えます。注文はメールとFAXで来る。受注管理はエクセル。請求は会計ソフト。在庫は別のシステム。それぞれは真面目に動いていて、互いにつながっていないだけです。そのつなぎ目を人間が手で埋めている。これが転記の正体です。

だから、担当者を急かしても速くなりません。入力ミスが起きたときに二重チェックを足すと、作業はむしろ増えます。私が見てきた範囲では、転記を減らせた会社は例外なく、人の頑張りではなくつなぎ方のほうを変えています。

放置されやすい理由がもう1つあります。1件あたりが短いことです。3分の作業に対して「自動化しよう」とは思いにくい。ところが冒頭の例のように月20時間まで積み上がると、時給2,500円換算で月5万円分の人件費になります。ここで初めて、手を打つ価値のある数字として見えてきます。

方法1。エクセルの中で完結する転記は、関数とマクロで足ります

最初に確認してほしいのは、その転記が本当にシステムをまたいでいるかです。エクセルからエクセルへの転記、別シートへの写し替え、フォーマット違いの表への貼り直し。この範囲なら、外の道具は要りません。

使うのは関数と、マクロ(エクセルの操作を記録して自動で再生させる機能)です。転記元の表から必要な列だけを引いてくる、条件に合う行だけを別シートに集める、決まった順序の整形を1クリックで走らせる。ここは昔からある機能で、追加のお金はかかりません。

以前は「マクロを書ける人が社内にいない」がそのまま壁でしたが、この壁は下がりました。やりたいことを日本語で書いて生成AIに渡せば、動くマクロの下書きが返ってきます。仕上げに人の確認は要りますが、ゼロから覚えるのとは負担が違います。

見落とされがちですが、費用対効果ではここが一番強い。私は相談を受けたとき、まずこの範囲で終わらないかを疑います。ツールを増やす前に、手元の道具で片付く転記を先に潰しておくと、後の判断がすっきりします。

方法2。別々のシステムをまたぐ転記は、自動化ツールで直結させます

問題は、転記元が外にある場合です。問い合わせフォーム、受注メール、通販サイトの管理画面、会計ソフト。ここからエクセルやスプレッドシートに写す作業は、関数では届きません。

この領域には、システム同士をつなぐための自動化ツールがあります。n8n、Zapier、Makeといった名前のもので、基本はノーコード(プログラムを書かず、画面上で部品を並べて組み立てる方式)で組めます。イメージとしては、部品を線でつなぐ配線図です。「フォームに送信があったら」という起点を置き、「必要な項目を取り出す」「スプレッドシートに1行足す」「担当者にチャットで通知する」を線でつなぐ。一度つなげば、以後は人が触らなくても流れ続けます。

大事なのは、この方式には生成AIが要らない場合が多いことです。項目の位置が毎回決まっているデータなら、条件分岐だけで最後まで機械的に処理できます。判断が不要なぶん、間違えようがない。転記の自動化が地味なわりに効きやすいのは、この性質があるからです。

導入の入口としては、n8nを日本語環境で使う手順をSTEP形式でまとめてあります(n8nを日本語で使う方法と、最短で動くワークフローの作り方)。同じ仕組みで、私はGA4(Googleのアクセス解析)の数値を毎回手で拾ってレポートに写す作業をやめました(GA4のレポート集計をn8nで自動化した記録)。数字を人が転記する作業は、業種を問わずどの会社にもあります。

なお、人の画面操作をそのまま録画して再生するタイプのソフト(RPAと呼ばれます)も同じ用途で売られています。ただ、画面のボタン位置が変わると止まることがあり、止まったことに気づけない運用になりがちです。選べるなら、画面の見た目ではなくデータそのものを受け渡す方式のほうが長持ちします。

方法3。形が揃っていない書類は、AIに読ませて下書きまで作らせます

方法2でつなげないケースがあります。取引先ごとにレイアウトの違う注文書、手書きのFAX、本文の書き方が毎回違うメール。位置で項目を取り出せないので、機械的な配線では拾えません。

ここが生成AIの出番です。PDFや画像を読ませて、「発注日、品番、数量、納品先を表の形で出して」と頼む。人間が目で読んで判断していた部分を、そのまま任せる形になります。抜き出した結果を方法2の配線に乗せれば、読み取りから書き込みまでが一本につながります。

注意点を1つ。この方法の精度は100%ではありません。手書きが崩れていれば読み違えますし、書式の初見パターンでは項目を取り違えます。なので、金額や数量のように間違うと損害が出る項目は、担当者が確認する工程を残してください。狙うのは無人化ではなく、ゼロから打ち込む作業を、目で見て承認する作業に変えることです。20分の入力が2分の確認になれば、それで十分に元は取れます。

3つのどれを使うかは、転記元の形で決まります

判断は難しくありません。転記元が何かで、ほぼ自動的に決まります。

転記元

使う方法

具体例

同じエクセル・別シート

関数とマクロ

集計表への写し替え、フォーマット変換

Webフォーム、SaaS、決まった書式のメール

自動化ツールで直結

問い合わせの一覧化、受注データの取り込み

書式がバラバラのPDF、手書き、自由文のメール

AIに読ませてから直結

取引先ごとの注文書、手書きFAX

自社の転記を紙に書き出して、この3列のどれかに振り分けてみてください。私の経験では、1列目と2列目で片付く転記が思ったより多い。3列目に入るものだけが「AIが必要な仕事」で、そこに全部を持ち込もうとすると話が大きくなりすぎます。

どの転記から手を付けるか。業務全般の選び方は別記事に譲り、転記に限って言えば頻度と件数です

複数ある転記のうち、どれから着手するか。判断軸は2つで足ります。頻度と件数です。

毎日発生していて、1回あたりの件数も多い転記。ここが最優先です。効果が翌週には数字で出るので、社内の納得も早い。逆に、月に1回・年に数回の転記は、面倒でも後回しでかまいません。仕組みを作る手間のほうが上回ります。

もう1つ、着手の前に必ずやってほしいことがあります。今その作業に月何時間かかっているかを測ることです。ストップウォッチで1件の時間を測り、1ヶ月の件数を掛けるだけで足ります。この数字がないと、導入後に「なんとなく楽になった」以上の報告ができません。続けるか、やめるか、次はどこに広げるかの判断が全部できなくなります。

転記以外の業務も含めて何から着手するかを整理したい場合は、業務の選び方を別記事にまとめてあります(AI業務効率化はどの業務から始めるか)。1つ決めた後の進め方と定着のさせ方は、90日で定着させる進め方のほうに書きました。

お金の話。3つの方法で費用の性質が違います

費用は、方法によって性質が変わります。

関数とマクロの範囲は、追加のお金がかかりません。使うのは社内の時間だけです。

自動化ツールは、無料枠から試せるものが多く、有料プランは月の実行回数や機能で段階が分かれます。金額はサービスごとに違い、改定もあるので、契約前に公式の料金ページで確認してください。n8nのように自分のサーバーに置いて動かす形を選べるものもあり、その場合はサーバー代だけになります。

AIに読み取らせる部分は、生成AIの汎用ツール(ChatGPT、Claude、Gemini)の個人向け有料プランが月3,000円程度です。人数を増やす段階になると、法人向けプランは1人あたり月数千円の水準になります。件数が多く、処理を自動で回し続ける場合はAPI(プログラムから呼び出す仕組み)の従量課金になりますが、これも思うほどの額にはなりません。私は広告アカウント20件超を毎朝自動で巡回させる仕組みを運用していますが、月2,600円で回っています(広告運用を自動監視する仕組みの記録)。

つまり、転記の自動化で本当に効いてくるコストはツール代ではありません。作る時間と、作った後に誰が面倒を見るかです。ここを見積もらずにツールだけ契約すると、動かないワークフローの月額だけが残ります。

最初から人手ゼロを狙うと、たいてい止まります

失敗の型は、ほぼ1つです。全部を一気に自動化しようとすること。

例外パターンを全部拾おうとすると、配線が複雑になり、作るのに時間がかかり、壊れたときに直せる人がいなくなります。私が勧めるのは、8割の定型パターンだけを自動で処理して、残り2割は今まで通り人が手で入れる形です。8割が消えるだけで、月20時間は4時間になります。

もう1つ、止まったときに気づける形にしておいてください。エラーが出たら担当者にチャットが飛ぶ、それだけで十分です。転記の自動化で一番怖いのは、動いていないことに数週間気づかず、データが虫食いになることです。

自社でやるか、外に頼むか

方法1と方法2の入口までは、社内で試せます。無料枠のある自動化ツールを1つ選び、いま一番件数の多い転記を1本だけつないでみる。ここは触ってみるのが早い。

外に頼む判断になりやすいのは、つなぐ相手が基幹システムや会計ソフトで、APIの調査から必要な場合、止まると業務が止まる種類の処理を任せる場合、社内に引き継ぐ人がいない場合です。F2Tでも業務フローの自動化を実装していて、進め方と作るものは業務フロー自動化のページに置いてあります。1本目を動かすまでの目安は2週間から4週間で、まず1本動かして効果を確認してから他の業務に広げる順番を勧めています。

どちらを選ぶにしても、先にやることは同じです。自社の転記を書き出して、3つのタイプに振り分けて、頻度と件数で並べる。ここまでは今日できます。並べ終えた時点で、外注が必要なのか、社内で足りるのかも見えてきます。

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この記事を書いた人:Tomo(F2T)。AIエージェント組織を自分の業務で毎日動かしている実装者です。このブログの記事は、すべてその実作業の記録から生まれています。

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