ブラジリアン柔術の予約をすっぽかした日、私は「自分の記憶」を信じるのをやめた——うっかりを根絶する通知の自動化

先日、やってしまいました。
通っているブラジリアン柔術の道場から、夜にメッセージが届いていたんです。「どうされましたか!?」「本日予約入ってますが!?」「大丈夫ですか!?」。見たのは22時半過ぎ。その日の20時から、私は自分で予約を入れていました。なのに頭の中では、完全に「あれは明日だ」と思い込んでいた。すっぽかしたことに、心配の連絡で初めて気づいたわけです。
平謝りでした。「しまった、いま気づきました。明日と勘違いしていました」と。道場の方は「なんかあったらと思って心配してました」と優しく返してくれて、それがまた申し訳ない。すぐに次回の申請を出して、その夜はずっと自己嫌悪でした。
ここで普通なら「次は気をつけよう」で終わります。でも私は、この手の「次は気をつけよう」を何百回と裏切ってきた人間です。気をつけて防げるなら、とっくに防げている。だからその夜、別のことを考えました。これは私の注意力の問題ではなく、仕組みの問題なんじゃないか、と。
「気をつける」で直らないものを、何で直すか
冷静に振り返ると、私のミスの本質はひとつでした。予約のリマインドを、自分の記憶に任せていた。
予約サイトで申し込んで、承認されて、確定する。その情報はサイトの中にあります。でも、開始時刻が近づいたときに私の背中を押してくれるものは、何もなかった。私が「今日だったかな」と自分から思い出さない限り、何も起きない。完全に、私の脳次第。

これは以前このブログで書いた「受動ルール」そのものです。情報は存在しているのに、発動の起点が人間の意識にある。忙しいとき、疲れているとき、思い込んでいるとき——いちばん肝心な場面で、人間の認知はあっさり外れます。私はその典型例を、自分の身体で再現してしまったわけです。
だとすれば、打ち手も決まっています。私が思い出すのを待つのをやめて、状況の側から通知が飛んでくる仕組みを作る。予約が確定したら、機械が勝手にそれを見つけて、開始前に私のスマホを鳴らしてくれる。私の記憶を、設計から外す。
問題は、そんなものを個人で作れるのか、でした。結論から言うと、作れました。AIと一緒に、半日で。
作ったものの全体像
完成したのは、こういう仕組みです。
クラウド上で30分おきに小さなプログラムが自動で動き、予約サイトを覗きに行く。私の予約のうち「確定」になっているものだけを拾い、カレンダーに自動で書き込む。そして、新しく確定した瞬間に一通、開始の約1時間前にもう一通、私のスマホへ通知を飛ばす。
ポイントは、これが私のパソコンの中で動いているわけではない、というところです。自分のPCに頼ると、電源を切っていたり寝ていたりする時間帯は動きません。朝いちばんの予約に弱い。だからクラウド側で動かして、私が何をしていようと、勝手に巡回し続けるようにしました。

言ってしまえば、秘書がひとり増えたようなものです。私が予約のことを忘れていても、その秘書は忘れない。確定を見つけたら教えてくれるし、時間が近づいたらもう一度つついてくれる。しかも文句も言わず、月額もほぼゼロで。
開発の過程——半日で何をやったか

中身を、専門用語をできるだけ外して順番に書きます。経営者の方に読んでほしいのは、技術の細部ではなく「この程度のことが、いまや個人で半日でできる」という事実のほうです。
最初にやったのは、予約サイトの仕組みを調べることでした。ブラウザでサイトを開くと、画面の裏側で「予約データを取りに行く通信」が走っています。AIにブラウザを操作させて、そのデータの在り処を特定しました。すると、予約の一覧が決まった形式で取り出せることがわかった。ここが見つかれば、あとは料理できます。
次に、その一覧から自分の予約だけを抜き出し、状態を見分ける処理を書きました。予約には「審査中」「確定」「却下」「処理済み」といった状態があります。通知したいのは確定だけ。しかも、すでに終わった過去の予約は無視して、これから始まる未来のものに絞る。ここはAIにロジックを書かせて、実際の予約データで何度か試して、正しく確定だけを拾えることを確認しました。
その確定した予約を、カレンダーに登録する仕組みをつなぎました。同じ予約を二重に登録しないよう、いちど登録したものは更新だけにする。却下や取り消しに変わったら、カレンダーからも消す。地味ですが、こういう「散らからない」配慮が、長く使える自動化と使い捨ての自動化を分けます。
最後に、通知です。確定を新しく見つけた瞬間に「予約が確定しました」と一通。そして開始の約1時間前に「まもなくです」ともう一通。スマホに直接プッシュで届くようにしました。あの夜の「明日だと思っていた」を、二度と起こさせないための二段構えです。
そして全体を、クラウドで30分おきに自動実行するように設定して完成。ここまでで、半日でした。
これは私が特別だからできた話ではない
正直に書くと、私はコードがまったく書けないわけではありません。でも、この規模のものを「ちょっと作るか」と思えたのは、間違いなくAIがいたからです。
サイトの裏側の通信を調べる、データの形を読み解く、登録や削除の細かい処理を書く、クラウドで動かす設定をする。ひとつひとつは、以前なら「半日の暇つぶし」では到底終わらない作業でした。調べて、つまずいて、検索して、を繰り返して何日もかかる。その腰の重さが、たいていの「作ればいいのに」を「まあいいか」に変えてしまう。
いまは、その腰の重さが劇的に下がっています。やりたいことを言葉で伝えれば、AIが調べ、書き、間違えれば直す。私は方針を決めて、できあがったものを確認する。この役割分担になった瞬間に、「個人のうっかりを仕組みで潰す」という選択肢が、現実的なコストの範囲に入ってきました。
ここが、中小企業の経営者にいちばん伝えたいところです。これまで「システムで解決」と言えば、外注して、要件を詰めて、数十万から数百万かけて、という話でした。だから現場の小さな「うっかり」は、ずっと人間の注意力に押し付けられてきた。でも、その前提が変わりつつあります。
現場の「うっかり」は、だいたい同じ構造をしている
私がすっぽかしたブラジリアン柔術の予約は、たまたま個人的な話です。でも構造を抜き出すと、会社の中で毎日起きていることと、まったく同じでした。

請求書の送り忘れ。見積もりのフォロー漏れ。契約更新日の見落とし。二重予約。折り返しの約束を忘れる。どれも「担当者がちゃんとしていれば防げた」と片付けられがちですが、本当の原因は同じです。発動の起点が、人間の記憶に置かれている。
人間の記憶は、忙しいほど、慣れているほど、当てになりません。だから「ちゃんとする」を前提にした運用は、いつか必ず破れます。破れたときに担当者を責めても、構造が変わっていないので、また同じことが起きる。私が「次は気をつけよう」を何百回も裏切ってきたのと、まったく同じです。
解決は、気合いではなく構造です。状況の側から通知が来るようにする。期日が近づいたら自動でアラートが出る。条件を満たしたら自動でリストに乗る。担当者が思い出さなくても、仕組みのほうがつついてくる。私が予約システムでやったことを、会社の業務に置き換えるだけです。
そしてその構造を作るコストが、AIによって個人の手の届く範囲まで落ちてきた。これが、いま起きている変化の本質だと思っています。
失敗を、仕組みに変える
あの夜、道場の方に心配をかけて平謝りした自分は、正直かなり落ち込んでいました。でもいまは、すっぽかしてよかったとさえ思っています。あの失敗がなければ、この仕組みは作らなかった。そして「人間の記憶に頼る運用は必ず破れる」という当たり前を、これほど痛みとともに自分のものにすることもなかった。
経営をしていると、ミスは責める対象になりがちです。誰のせいか、なぜ防げなかったか。でも本当に価値があるのは、その一回のミスを、二度と起きない構造に変換することのほうです。ミスは、責めるものではなく、仕組み化の入口だと思っています。
もし社内に「またあれ忘れてた」が定期的に起きている領域があるなら、まずひとつだけ選んでみてください。それを担当者の注意力で防ごうとするのをやめて、状況の側から通知が飛ぶ形に作り変える。いまなら、その第一歩は驚くほど軽い投資で踏み出せます。
私はこれからも、自分のうっかりを見つけるたびに、ひとつずつ仕組みに変えていくつもりです。記憶を信じるのをやめると、案外、毎日が静かになります。
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