ブログを書く時間がない。AIに素材集めを任せる仕組みを1時間で作った

「ブログが大事なのは分かっている。でも、書く時間がない」
これは私がしばらく抱えていた本音です。情報発信の効果は理解していました。しかし、机に向かって一本書き上げる時間は、どうしても捻出できませんでした。
「書く時間がない」の正体は素材集めだった
ある日、私はこの悩みを分解してみました。ブログが進まない理由は、文章力ではありませんでした。ネタが目の前を通り過ぎていくのに、それを拾って形にする作業が止まっていたのです。
私は毎日、AIと一緒にいろいろな仕事をしています。レポートを作る、仕組みを組む、失敗して直す。その一つひとつが、本当は記事の種でした。ただ、種は作業が終わると同時に忘れ去られていきます。書こうと思った頃には、何をどうやったのか思い出せません。
そこで私は、自分のAIエージェント組織(複数のAIが役割を分けて働く仕組み)に、こう頼みました。「日々の作業から生まれる記事ネタを、自動でブログにする仕組みを作りたい」と。
AIが、私の過去の作業を覚えていた

面白いことが、ここで起きました。
私はゼロから作るつもりでした。ところがAIは、いきなり実装を始めませんでした。まず、私の過去の作業記録を調べ始めたのです。
数分後、AIはこう返してきました。「過去に作った公開の仕組みが、既にあります。それと、前日に完成したばかりのPC間同期の基盤も使えます。だから、8割は流用できます。新しく作るのは3点だけです」
私は正直、驚きました。私自身が忘れていた過去の仕事を、AIの方が覚えていたからです。
しかもAIは、細かいつまずきどころまで引っ張り出してきました。以前この仕組みを作ったとき、記事管理ツール(microCMSという入稿システム)で、無効なIDを指定するとエラーも出ずに設定が消える罠がありました。契約プランの都合で、予約公開が使えない制約もありました。そうした過去の失敗を、AIは記憶から取り出して、同じ穴に落ちないよう先回りしたのです。
ここが、私が皆さんに一番見てほしい部分です。世の中で言われる「AIに質問する」とは、少し違う光景だと思います。私のAIは、私の仕事のやり方そのものを覚えていて、次の仕組みを作るときにそれを再利用しました。優秀な部下が「それ、去年もやりましたよ。あのとき詰まった箇所はここです」と言ってくれるのに近い動きです。
作ったのは、4ファイルと2行だった

実際に新しく作ったものは、驚くほど少ない量でした。
種を保存する場所、記事の書き方をまとめた方針の文書、ネタを拾うための小さな仕組み、そして同期を担う部分の拡張。数にして4つのファイルです。同期の拡張にいたっては、既にあったプログラムに実質2行を足しただけでした。
作業を始めてから動く状態になるまで、1セッション、時間にして約1時間。
最後に、テストをしました。日々の作業が終わると、仕組みが種を拾い、記録として保存し、2台のPCへ自動で同期する。この一連の流れが、最後まで止まらずに通ることを確認しました。
全自動にしなかった理由

ここで一つ、あえて作らなかった機能があります。
最初、私は「完全に自動で種を集められたら楽だ」と考えました。作業が終わるたびに、AIが勝手にネタを判断して溜めてくれる形です。しかし、これは却下しました。
理由は、質が落ちるからです。何でもかんでも自動で拾うと、記事にならないゴミのような種が大量に混ざります。誤って拾ってしまう誤爆も起きます。集める量は増えても、使える種の割合はむしろ下がるのです。
だから私は、半自動という形を選びました。作業を終えるとき、AIの方から「今日の作業、記事のネタになりそうなものはありますか」と聞いてくる。判断するのは、人間の私です。集めるのは仕組み、選ぶのは人。この線引きが、質を守る鍵でした。
品質の話を、もう少し続けます。AIが書いた文章をそのまま公開するのは、実は危険です。私はこのブログの別の連載で、公開前の記事を12本、AIの監査役(内容の誤りを独立して点検する担当)にかけたことがあります。そのうち3本が、事実の誤りでブロックされました。割合にして25%です。4本に1本は、そのまま出していたら間違いを世に出していた計算になります。
ですから私の仕組みでは、種を集める部分と、公開前に内容を点検する部分を、別々の担当に分けています。集める効率を上げても、出す前のチェックは緩めません。
外注費が、判断の時間に置き換わる

ここまでの話を、経営の数字に置き換えてみます。
ブログ記事を外注すると、1本あたりおよそ1万円から3万円かかります。仮に週1本、月に4本を外注すると、月に4万円から12万円、年間では48万円から144万円の外注費になります。
私の仕組みでは、この費用が判断の時間だけに置き換わります。素材は、すでに自分の実作業から集まっています。人間がやるのは、集まった種から「これを記事にしよう」と選ぶ判断だけです。
しかも、外注との違いは費用だけではありません。外注ライターに頼むと、書き手は私の現場を見ていないので、どうしても一般論に寄ります。一方で、私の仕組みが扱うのは、私自身が実際に手を動かした記録です。他社には書けない一次情報が、そのまま素材になります。独自性が落ちません。
どんな会社なら、同じことができるか
正直に、向き不向きを書きます。
この仕組みが効くのは、日々の業務そのものが情報の宝庫になっている会社です。たとえば、専門知識を使って顧客の課題を解く仕事。士業事務所、コンサルティング、専門的なサービス業などが当てはまります。現場での判断や試行錯誤が、そのまま読者の役に立つ知識になるからです。
逆に、向かないケースもあります。発信したい内容が日々の業務とほとんど関係ない場合、この「作業から種を拾う」やり方は空回りします。社内に一次情報を残す習慣がまったくない会社なら、まず記録を残すところから始める必要があります。仕組みだけ入れても、拾う種がなければ動きません。
もう一つ、正直に付け加えます。今回の仕組みが1時間で組めたのは、過去に作った資産があったからです。何もない状態からなら、もう少し時間はかかります。それでも、一度作ってしまえば、あとは追加の作業がほぼゼロで回り続けます。
終わりに
この仕組みを作った日、私が一番強く感じたのは、達成感よりも少しの気味悪さでした。私が忘れていた過去の仕事を、AIの方が正確に覚えていて、それを組み合わせて次を作る。自分の仕事の記憶が、自分の外側に積み上がっていく感覚です。
まだ運用は、始まったばかりです。この記事自体も、その仕組みが拾った最初の種から生まれました。次は、集まった種のうちどれが実際に読まれるのか、そのデータを見てみたいと思っています。
あなたの会社にも、毎日ただ通り過ぎているだけの「種」が、きっとあるはずです。