医療記事を自動で書くAIを作ったら、思わぬ壁にぶつかった話

Written by
John Doe
公開日
2026-03-25

目次

きっかけは、一通のフィードバックから始まった

医療記事を自動生成するAIシステムを開発していた私は、ある日、テストユーザーから辛辣なフィードバックを受け取りました。

「本文が箇条書きばかりで、今のクオリティだと使えない。もっと自然な文章で、次を読み進めたくなるように書いてほしい」

確かに、生成された記事を改めて読んでみると、まるで教科書のような硬い文章ばかり。統計データを示すたびに「〜によれば」「〜の調査では」と繰り返され、読んでいて疲れてしまう内容でした。さらに、タイトルには「:」や「|」といった記号が乱用され、どこか不自然な印象を与えていました。

これは単なる文章スタイルの問題ではなく、AIに「良い記事とは何か」を正しく理解させられていない、私自身の設計ミスでした。そこから、本格的な改善プロジェクトが始まることになります。

医療記事に求められる、矛盾した二つの要求

医療記事を書く上で、私たちは常に矛盾した要求に直面します。一つは「正確性」です。医療情報は人の健康に直結するため、曖昧な表現や根拠のない主張は許されません。しかし同時に、もう一つの要求があります。それは「読みやすさ」です。

いくら正確でも、専門用語だらけで硬い文章では、誰も最後まで読んでくれません。特に、健康に不安を抱えて記事を読みに来る方々にとって、難解な医学用語の羅列は、さらなる不安を招くだけです。

この二つのバランスをどう取るか。それが、今回のプロジェクトで最も頭を悩ませた課題でした。

エビデンスという名の「諸刃の剣」

医療記事の信頼性を高めるため、私はシステムに4つの情報源から自動的にデータを集める機能を組み込んでいました。一つ目は、アメリカ国立衛生研究所が提供する医学論文データベース。二つ目は、日本の厚生労働省が公開している健康統計。三つ目は、政府の統計ポータルサイト。そして四つ目は、世界保健機関の国際統計です。

これらのデータを記事に盛り込めば、確かに「根拠のある情報」を提供できます。しかし、ここに落とし穴がありました。AIは真面目すぎたのです。

生成された記事を読むと、こんな文章が並んでいました。

「厚生労働省の調査によれば、糖尿病患者は増加傾向にあります。WHOの報告によると、世界的にも同様の傾向が見られます。国民健康・栄養調査では、生活習慣の改善が必要とされています」正確ではあります。でも、読んでいて楽しいでしょうか。まるで学術論文のような堅苦しさで、読者は途中で離脱してしまうでしょう。

発想の転換:エビデンスは「裏方」に徹してもらう

ここで私は、大きな発想の転換をしました。エビデンスは「表に出す」ものではなく、「裏で支える」ものとして扱うべきだと気づいたのです。

料理に例えるなら、これまでは食材の産地や栄養成分表を料理の上に全部載せていたようなものです。確かに情報は正確ですが、食欲は失せてしまいます。本来、そういった情報は「メニューの下」に小さく書いておけばいい話です。

そこで、AIへの指示を大きく変更しました。「統計データは文章に自然に溶け込ませること。引用表現は記事全体で2〜3回程度に留めること。詳しい出典は、記事の最後にまとめて記載すること」

この変更により、記事はこのように変わりました。

「実は日本では、約2,000万人が糖尿病の可能性を抱えています。これは決して他人事ではありません。でも、だからこそ、今日から始められる予防法を知っておくことが大切なのです」

同じ情報を伝えていますが、読者の心に響く表現に変わったのではないでしょうか。

Google検索で「勝つ」ために必要だったこと

システムの改善を進める中で、もう一つの課題が浮上しました。それは「検索上位に表示される他の記事と、どう差別化するか」という問題です。

いくら良い記事を書いても、誰にも読まれなければ意味がありません。そして、多くの人は
Google検索の上位5つの記事しか読まないという現実があります。つまり、上位の記事がどんな内容を扱っているかを知らなければ、差別化どころか、競争のスタートラインにすら立てないのです。

そこで、新しい機能を追加することにしました。Googleで実際にキーワード検索を行い、上位5つの記事が何を書いているかを自動で分析する機能です。各記事のタイトル、内容の要約、そして「読者が何を求めているのか」という検索意図まで、AIに読み取らせることにしました。

この機能により、AIは「競合記事では触れられていないポイント」や「もっと深く掘り下げるべきトピック」を自動で見つけ出せるようになりました。いわば、AIが自分で市場調査をして、勝てる記事を書く戦略を立てられるようになったのです。

予期せぬ技術的トラブル、そして学び

順調に見えた開発でしたが、システムの起動テストで思わぬエラーが発生しました。プログラムが文字列を誤って解釈し、構文エラーを起こしたのです。原因は、私がAIへの指示文の中で使った特殊記号でした。プログラムの世界では、特定の記号には特別な意味があります。私はそれを考慮せず、普通の文章を書く感覚で記号を使ってしまったのです。

この問題を解決するのに、実は一番時間がかかりました。エラーメッセージを何度も読み返し、コードのどこが悪いのかを一つずつ確認していきました。そして最終的に、問題のある記号を全て削除し、よりシンプルな表現に書き換えることで解決しました。このトラブルから学んだことは、「シンプルであることの重要性」です。複雑な仕組みは、それだけ壊れやすくもあります。本当に優れたシステムとは、シンプルでありながら強力なものなのだと、改めて実感しました。

完成したシステムができること

改善を重ねた結果、システムは以下のような流れで記事を生成できるようになりました。

まず、Google検索で上位に表示される記事を自動で分析します。次に、世界中の医学論文データベースから最新の研究情報を集めます。それと並行して、日本政府の統計データと世界保健機関の国際統計を取得します。

これら全ての情報を統合し、AIが一つの記事として編み上げます。この時、先ほどお話しした「自然な文章」「引用は控えめに」「ストーリー性を持たせる」という指示に従って執筆されます。

記事が完成すると、最後にもう一度、別のAIが医学的な正確性をチェックします。危険な情報はないか、法律に違反する表現はないか、必要な注意書きは含まれているかを確認し、問題があれば警告を出す仕組みです。

このプロセスにかかる時間は、わずか20〜30秒ほど。人間が同じことをしようとすれば、何時間もかかる作業を、瞬時に完了させることができるようになりました。

次はどこへ向かうのか

今回のプロジェクトを通じて、私は「AIに何かをさせる」ということの難しさと面白さを、身をもって体験しました。AIは指示されたことを忠実に実行しますが、その「指示の仕方」次第で、結果は天と地ほど変わってしまいます。

医療情報というデリケートな分野で、正確性を保ちながらも読みやすい記事を生成する。この課題は、一見矛盾しているようで、実は相反するものではありませんでした。むしろ、本当に正確な情報だからこそ、わかりやすく伝える責任があるのだと気づきました。

今後は、統計データをグラフで視覚化する機能や、記事を多言語に翻訳する機能も追加していく予定です。そして何より、このシステムが医療従事者の方々の負担を減らし、より多くの人に正しい健康情報を届ける助けとなることを願っています。

技術は道具に過ぎません。大切なのは、それを使って何を実現するか。これからも、その問いと向き合いながら、開発を続けていきたいと思います。

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